藤原竜也が主演を務めているドラマ『全領域異常解決室』（フジテレビ系）が期待していた以上に面白い。「神隠し」や「シャドーマン」、「キツネツキ」など、超常現象やオカルトの類をモチーフにした物語は、次々に信じられないことが起こる現代社会を生きる私たちにとって、ある種すんなりと受け止められるものだからなのかもしれない。

　しかしこの物語を、どのような人物たちが、どのように転がしていくのかが重要。どのキャラクターもそれぞれ気になるのだが、個人的には荒波健吾がとくに気になっている。演じているのはユースケ・サンタマリアである。

　本作は、最先端の科学捜査をもってしても解明できない“不可解な異常事件”を、「全領域異常解決室」という捜査機関が解決していくものだ。この「全領域異常解決室」（通称「全決（ゼンケツ）」）は、異常事件に挑む捜査機関としては世界最古といわれるもので、あらゆる超常現象やオカルトの類も究明している。

　超常現象のスペシャリストにして武の道も極めている興玉雅（藤原竜也）が室長代理を務め、元警視庁音楽隊カラーガード出身の警察官で「全決」へ出向してきた雨野小夢（広瀬アリス）が雅の相方に。局長を務めているのは宇喜之民生（小日向文世）だ。

　異常な事件が起こるたびに人々が恐れているのは、「ヒルコ」と名乗る人物。自らを「神の一柱」だとするこの存在を追うのが、警視庁捜査一課・警部の荒波健吾（ユースケ・サンタマリア）が率いる「ヒルコ専従班」だ。大河ドラマ『光る君へ』（NHK総合）で人智を超えた力を持つ陰陽師・安倍晴明を好演していたユースケが、ここで世間を騒がせる超常現象の根源を追っているというのが面白い。しかも荒波は、ノンキャリアのたたき上げでここまでやってきた刑事だ。つまり彼は、「ザ・刑事」である。

　だから荒波は「全決」に敵対心を抱いている。事件現場を自分の足で駆け回ってきた彼からすれば、興玉が口にすることなど信じがたいもの。品と余裕が感じられる藤原の振る舞いと比べると、ユースケのパフォーマンスは対照的だ。藤原はセリフ回しも足取りも軽やかだが、ユースケの声は野太く重く、演技の重心が低いように感じる。本人がどれくらい意識しているのかは分からないが、荒波はしっかりと地に足がついていて、これが刑事としてのリアリティにつながっているように思う。“荒波健吾＝ユースケ・サンタマリア”を「ザ・刑事」と評したのは、こういうわけだ。