アニメは“演出面”が評価される時代に? 『マケイン』『義妹生活』に感じるリアリティ

『義妹生活』の解像度を高める「定点カメラ」的な演出 

TVアニメ「義妹生活」本PV

 『義妹生活』は意図的にスローな展開にされており、テンポよく話が進む『負けヒロインが多すぎる!』とは対照的な作品だ。

 『義妹生活』は親の再婚により義兄弟となった2人の関係性を描いた作品だ。2人の些細な関係性の変化をじっくり見せていく演出が取り入れられており、同じ構図・レイアウトを重ねている場面が多い。まるで2人の生活を「定点カメラ」で切り取って見ているように感じさせる。

 また、日常の些細な動作も切り取っているのが特徴だ。第1話目では、ヒロインの綾瀬沙季が、新しい家の照明のスイッチの場所が分からず、間違えて廊下の電気をつけてしまうシーンが長めの尺で描かれている。人によっては退屈に感じられるほどに2人の関係性の変化や人間性をじっくり描いているが、この手法は後々効いてくる。例として第3話では、初めてヒロイン側の視点が日記形式の独白で描かれる。ここで一気に物語の解像度が上がり、じっくり積み重ねてきたものが爆発するのだ。もし途中で視聴を辞めた方がいれば、ぜひ見てもらいたいシーンである。

 ラブコメや学園ものの作品は、キャラクターの心情を積み重ねることで見えてくるものがあり、面白さも増していく。しかしこの2作は、独自の演出によって視聴者ごとの解釈の幅を実現し、直接語る以上の情報を積み重ねているのだ。

「神作画」の次は“演出面”が評価される時代に?

 日本のアニメは2010年代後半から『鬼滅の刃』『呪術廻戦』に代表される、絵が綺麗で滑らかに動くいわゆる「神作画」の作品が高く評価されるようになった。それに伴い、他作品も一昔前なら映画でしか見られなかった高クオリティの作画が、TVアニメとして放送されるようになった。

 しかし「神作画」にも見慣れてくるもので、今や作画が良いのは当たり前かつ大前提だ。それゆえ神作画だけでは通用せず、演出面が一層評価される時代になっているように感じる。今期でいうと、TVアニメ『逃げ上手の若君』は、随所に実写映像を取り入れた演出が不気味さやワクワク感を醸し出しており、作品の面白さを底上げしている。

 『負けヒロインが多すぎる!』『義妹生活』は、どちらも原作の魅力を活かしつつ、実写的リアリティを追求した作品だ。この2作が国内外で高く評価されたのは、アニメにリアリティを求める人が増えているためで、各アニメスタジオも3次元のようなリアリティを追求する流れになっているのではないだろうか。

 2024年の秋アニメは、新作・続編ともに話題作が目白押しだ。作画やストーリーの良さだけでなく、各作品がどのような演出を取り入れているかも注視して放送を楽しみたい。

参照
※ https://x.com/amamori_takibi/status/1832628399287988483

■放送情報
『義妹生活』
dアニメストア、U-NEXT、アニメ放題にて配信中
キャスト:天﨑滉平、中島由貴、鈴木みのり、鈴木愛唯、濱野大輝、小林親弘、上田麗奈
原作: 三河ごーすと(MF文庫J「義妹生活」/KADOKAWA刊)
キャラクター原案:Hiten
監督:上野壮大
シリーズ構成:広田光毅
キャラクターデザイン:仁井学
メインアニメータ―:太田衣美、渡邉徳
色彩設計:桂木今里
美術監督:甲斐政俊
撮影監督:近藤慎与
編集:白石あかね
音響監督:小沼則義
音響効果:山田香織
音響制作:100studio
音楽:CITOCA
音楽制作:one cushion, inc、日本コロムビア
アニメーション制作: スタジオディーン
©三河ごーすと・Hiten/KADOKAWA/義妹生活製作委員会
公式サイト:https://gimaiseikatsu-anime.com/
公式X(旧Twitter):https://x.com/gimaiseikatsu

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