『占拠』シリーズはなぜ大ヒットした? 『潜入兄妹』Pが語る、話題を生むドラマの“仕掛け”
“青鬼”菊池風磨や“志摩”ぐんぴぃなど、独特なキャラクターが誕生した裏側
ーー『占拠』シリーズはキャスティングも絶妙でした。ジェシーさんや高橋メアリージュンさんがいいハマり方をしていました。
尾上:キャスティングはいろいろな方に相談しつつ決めています。それも「こうなるとベタだろう」というのをまず考えた上で、例えばリーダーを意外な俳優にしたり、「どうしてだろう?」と思ってくれる要素を考えますね。もちろんお芝居がお上手な方というのが第一優先ではありますが、キャスティングも演出というか、楽しんでもらうための大きなピースなので、そういうふうに作っています。
ーー誰をどの役にあてるか、そういうキャスティングの明確な基準が尾上さんの中にあるのでしょうか?
尾上:やはり難しいですよね。でも、うちは幸い、オリジナル作品が多いんです。原作もののように先にキャラクターが決まっていてキャストの方をあてていく場合もありますが、どちらかというと、この役者さんとやってみたいという思いが先にあって、そこにキャラクターを落とし込んでいくという逆の発想もあります。(役を)作れる、という言い方もできますね。
ーーなるほど。
尾上:『大病院占拠』での青鬼役は、菊池風磨さんだと面白くなりそうだなと思い、(菊池が)どういう口調で喋ったら面白いか、どういう佇まいでいたら面白いのかなどから逆算して作り上げました。
ーー青鬼は個性的でありつつ菊池さんのキャラクターにも合っているし、絶妙なキャスティングでした。個人的にはぐんぴぃさんもとても良かったです。
尾上:大活躍してますよね。
ーーぐんぴぃさんはなぜ起用する流れに?
尾上:僕が元々彼のYouTubeチャンネルを観ていたことと、俳優として舞台を1本やっていたのがきっかけです。それをたまたま僕が観に行って、そこでしっかりとした演技ができる人なんだと分かって。そこで、大抜擢枠としてお願いしたのですが、面白い感じにうまくハマったというか、彼も真面目にちゃんとやってくれて。でも「僕にあて書きで書いてますよね」みたいな雰囲気でしたけどね(笑)。
ーー実際にそういう話をしたんですか?
尾上:しましたね。彼の方から「もう監督から演技指導とかされていないんですけど、僕は大丈夫なんでしょうか……」みたいな感じで言ってきたので、「大丈夫です。もうそのままやってください」という感じで(笑)。だから、あれは別に役としての演技はしていないです。彼は本当に、普通に自分がそこにいたらというふうにやっている。
ーー視聴者として何回も笑わせてもらいました。『潜入兄妹』では竜星涼さんと八木莉可子さんがW主演です。
尾上:詐欺集団に潜入するという、ある意味マフィアとかヤクザ的な、男臭い、闇深い犯罪ドラマになるので、その中にギラギラした人というよりは、どちらかというとスタイリッシュでかつ演技が上手い人であることを意識してキャスティングしました。お2人はすごくスタイリッシュで、かつカッコいい。そんな兄妹というのが成立しているなと思ったので、やっていただくことにしました。
ーー撮影も始まっているとのことですが、実際に演技を見てどうですか?
尾上:すごくカッコいいですし、犯罪組織の怖さみたいなものもちゃんと表現してくれていると感じています。特に竜星さんに関してはアクションが非常に得意というか、体のキレがハンパないので、そういった意味でも、エンターテインメントとして魅力がある感じになっていると思います。
ーー事前に公開されているビジュアルからみても、革ジャンを着ていたり、とてもカッコいいです。
尾上:怪しさとスタイリッシュさがどう共存できるかという感じで作っています。ポスタービジュアルの背景は怪しげなネオンで作っていて、でもその中にカッコいい2人がたたずんでいて、何か起こりそうな予感がする……そういう感じをイメージしました。
エンタメと社会問題がクロスする
ーー今回の『潜入兄妹』で一番キーとなるコンセプトは何ですか?
尾上:『占拠』シリーズはタイムリミット感があって、何分までにやらないと人が死ぬという感じがずっと続いていました。今回はジリジリとした、バレたらアウトという少し異なる緊張感を出したかったんです。それと、詐欺や犯罪って最近また増えていて、若い子たちがすぐ加担してしまったり、ネットの中で騙されてしまったりすることがあります。「お金とは何なのか」「豊かさとは何なのか」。そういうことを根底にテーマとして走らせたいなと思っています。
ーー『大病院占拠』でもコロナ禍を意識した設定であったり、リアルタイムな社会問題を描いていますが、それは何故なのでしょうか?
尾上:まずは王道エンターテインメントとして面白いものを作りたいというのが第一にあります。ただそれを設定とか動機とか説得力を持って観てもらうためには、社会問題とか、みんなが抱える悩みとか、そういうものが根底にないと何も残らないんじゃないかと思うんです。
ーー『潜入兄妹』では“闇バイト”的なことですね。
尾上:なんでそんなことに簡単に手を染めてしまうんだろうとか、普通に考えたらそれで一生終わるわけで、バレることを考えたら絶対にやらないじゃないですか。でも、どういう手口で、どんな簡単なことで、人はすぐ犯罪に手を染めてしまうのか……。そしてそれで得られるお金は何のために使うんだろうか……。そういうものがうっすらと香ればいいと思っています。
ーー『潜入兄妹』は、『占拠』シリーズに続き毎週重要人物が明かされていく仕組みです。これはネットで盛り上がるので、ある種の発明だと思っているのですが、ドラマ全体として盛り上がる仕掛けはありますか?
尾上:ありがとうございます(笑)。キャストが誰かというのは、もちろん大きな興味を持ってもらえたら嬉しいです。それ以外にも意外な展開を重ねていく構造になっているのですが、結構騙し合いになってくると思うんですよね、詐欺集団の話なので。誰がどこでどう騙されているのか、リアルタイムで観て、真相を知って、もう1回観返したくなるような構造に作っています。ぜひそういうところに注目していただければと思っています。
ーー今後作ってみたいドラマや、もっと発展させていきたいものはありますか?
尾上:やりたいことはすごくいっぱいあるんですよね。だから、いかに王道路線というか、エンターテインメントとして楽しめるものの裏に社会的なテーマを忍ばせるかというところで、作品をどんどん作っていきたいなと思っています。
■放送情報
土ドラ10『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』
日本テレビ系にて、10月5日(土)スタート 毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:竜星涼、八木莉可子、徳井優、入山杏奈、長尾純子、呉城久美、伊藤あさひ、岡井みおん、半田周平、フェルナンデス直行、神尾佑、及川光博
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
演出:大谷太郎、西村了(AX-ON)、茂山佳則(AX-ON)
脚本:福田哲平
音楽:ゲイリー芦屋
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
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