「TikTok Creator Summit Japan 2024」レポ ハイクオリティなコンテンツ制作へのヒントも
9月28日、クリエイターの成長と交流を目的にした「TikTok Creator Summit Japan 2024」が、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された。日本を代表するTikTokクリエイターに加え、海外からもゲストが登場、多彩なセッションが繰り広げられ、クリエイター向けの収益化プログラムや最新データの紹介、制作をサポートするツールなども紹介された。
本サミットは「Go Beyond」として、「トレンドを超えていけ」「収益の壁を超えていけ」「表現の幅を超えていけ」の3つをテーマに多彩なトークセッションが行われた。とりわけ、近年TikTokが注視するハイクオリティなコンテンツを制作するクリエイターが登壇し、コンテンツ制作のヒントが多数提供された。
トレンドはハイクオリティなコンテンツ
最初にTikTok Japan 執行役員の佐藤友浩氏から最新のデータトレンドが紹介された。
佐藤氏は、現在成功しているのは、以下の3つのポイントを抑えたハイクオリティなコンテンツだという。
工夫を凝らしたコンテンツ
人を惹きつけるコンテンツ
専門性の高いコンテンツ
これら3つの要素を持ったハイクオリティなコンテンツは、1本の動画当たりのフォロワー数増加は40倍以上、視聴回数は3倍以降、視聴時間も67%高く、検索結果での表示も36%高いという。さらには収益率も211%高くなるそうだ。
工夫を凝らすといっても、高額な機材やプロ仕様のスタジオは必要ない、音楽や編集、照明の工夫など細かい要素で、量よりも質のこだわる姿勢が大切だという。
人を惹きつけるコンテンツとは、インタラクティブ性が高く、没入感の高い、共感性がある、情報的価値があるコンテンツだという。専門性の高いコンテンツは、ニッチな分野も強みになり、得意分野を活かせる分野だ。
気鋭のクリエイター集団と又吉直樹が対談
続いてお笑い芸人の又吉直樹と、縦型ショートドラマのトップランナー、ごっこ倶楽部の志村優と早坂架威が登壇した。
又吉はMC TAKAからショート動画をよく見るかについて質問されると、「料理動画をよく見ると回答」。空いた時間の暇つぶしや何かを調べる際に見ることがあるようだ。またごっこ倶楽部の動画で早坂が監督した作品も見て「めっちゃ面白かった」と感想を述べた。
志村は昨今流行しているショートドラマについて、次世代アートのつもりで作っていると語り、2時間の映画と同じ分の感動を伝えていると語る。そんなごっこ倶楽部は、ショートドラマの構成として重要なのは、「目の占有」「手の占有」「耳の占有」だという。縦の構図を意識した動きと効果音でセリフと感情を補強し、ストーリーを1カット1.5秒で進めるように心がけ、視線誘導のトリックを駆使する。
重要な意識として、TikTokでは動画を見せるというよりも感想を作りにいくという姿勢だという。人は必ずコメント欄を見に行く。その時間を無駄にしたくないと考えるものだ。あえてコメントでモノ申したくなるセリフや場面を作り、視聴者がコメントしたくなるようにしているとのことだ。作り手だけでなく、視聴者とコメントを書く人が関わっていることを意識して設計することが一番難しいという。
又吉は、それに対して、映画のようなものは観終わるまでみんなが何を考えているかわからないものだが、それに対して新しい鑑賞様式を生んでいると語る。これは新しい同時視聴のスタイルでコメントを書く側もコンテンツに価値を生み出していると指摘。自身もショート動画を鑑賞する時に動画の途中でコメントを見る時があるが、それはそういう行動様式を取るように設計されているのかと関心を示した。
コンテンツの魅力を高めるための工夫を聞かれた又吉は、ショート動画としても共通する部分として、読者として共感があるか、さらに、発見があるかを意識するという。そして、小説の場合、あえて冒頭から難しいように書くこともあるという。それで離脱する人がいてもそれはその読者に合っていないので、お互いに幸福だというのだ。「僕が(この世界の)全ての小説を書けるわけじゃない、僕の小説が合わないなら、他の本を読んでくれればいい。その合う合わないを最初に騙さないようにしている」という。
ショート動画も最初の2、3秒がとにかく重要だが、読後感を作るのも重要だそうだ。最初の数秒でどんな読後感が得られるのかを視聴者に想定できるようにすることが重要だという。そのためにごっこ倶楽部は役者のインプロ(即興)も重視するそうだ。例として、素に戻って笑ってしまったシーンをそのまま使ったら、コメントにもそれを指摘する人がいたが、そういうのも有効な仕掛けだという。
最後に又吉もショート動画を作ってみたいかと問われ、コントならやってみたいと語り、ごっこ倶楽部は是非作らせてほしいと語った。
多彩な収益化プログラムと制作ツール
続いて、収益化プログラムについて紹介するトークセッションが開始。TikTok Japanの早川真翔氏とコント動画で人気を博すネクストサウナの2人と、グルメ紹介動画のうざみ(東京・関西グルメ)(※以下、うざみ)が登壇。ここでは4つの収益化ツールが紹介された。
Creator Rewards Programでは、独創性、再生時間、検索価値、エンゲージメントが重視される。うざみはこのプログラムによって、それまで行けなかったお店にも行けるようになり、機材も購入できてクリエイター活動にプラスになっているという。ネクストサウナはこのプログラムを始めた1年前はバイト生活だったが、TikTok一本で生活できるようになり、クリエイティブな活動に時間を割けるようになったそうだ。
サブスクリプションについては、限定コンテンツを配信でき、バッジやステッカー機能などが使えるようになる。ここではうざみは、ボツになったネタや、美味しくなかったり接客のよくなかったお店を正直に紹介しているという。
3つ目に紹介されたのは、TikTok Oneだ。これは企業案件とクリエイターをマッチングするサービスで、今は完全招待制となっている。
4つ目のTikTok LIVEは、ユーザーからギフトを受け取ることで収益化が可能だ。ネクストサウナは、フォロワー数の節目の数字に達した時などに活用しているとのこと。
続いて、ハイクオリティなコンテンツを制作するためのツールが紹介された。TikTok Japanの宗野航来氏と俳優兼TikTokクリエイターの大川泰雅が登壇。
まず紹介されたのは、TikTokクリエイターのための総合的なコンテンツ制作・管理プラットフォーム「TikTok Studio」だ。デスクトップ版とアプリ版が用意されていて、いずれも無料で利用できる。
「TikTok Studio」は、編集機能に加え、著作権確認や、無料で長尺最大60分までの編集可能、投稿スケジュールの設定など多彩な機能が満載だ。また10月からは、1分以上の動画にも使える音楽ライブラリが利用可能になる。
さらに、TikTokスペシャルプログラム(仮称)として、クリエイターとしての活躍の場を提供する機会を創出する企画が進行しているという。また、TikTokではTikTok Creator Academyも実施しており、人気クリエイターが講師となって学べるプログラムや、クリエイターの仲間と出会える機会、最新時報へのアクセスなどを提供しているとのこと。今後もクリエイターはハイクオリティなコンテンツを提供しやすいようにツールを開発していきたいとのことだ。