『ヴェノム』第3作でついにスパイダーマンとリンク!? MCUでも示唆されていたヌルが登場

 こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします! 今回は先日公開された『ヴェノム:ザ・ラストダンス』のファイナル予告の気になるところを解説します。

『デビルマン』『寄生獣』のような展開に?

 この予告編からわかるのは、シンビオート(黒い寄生体)と人間エディ(トム・ハーディ)の合体である“ヴェノム”が、ついに地球に侵攻を開始するシンビオート軍団と戦うということです。『ヴェノム』映画は、1作目がライオット、2作目がカーネイジとヴェノムと同様の怪人と戦ってきましたが、今回はさまざまなシンビオート、しかも恐竜や怪魚のような人型でないものも多い。ヴェノム対シンビオート軍団の壮絶な戦いが描かれるでしょうか。

 本来、人類の敵側にいた生命体が人間に寄生し共同生活を送るようになり、やがて人々を守るためかつての仲間と戦うという展開は『デビルマン』や『寄生獣』っぽいですね。

 そしてこの映画ではずっと一緒だったエディとシンビオートの別れを匂わせています。この予告で2人が暮らしてきた日々が回想されるシーン(2作目『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』で印象的だった朝食の場面など)を見ることができます。『ヴェノム』シリーズは人間とエイリアンのバディものですが、2人の関係は恋人同士っぽいですね。本作には(いまのところ)前2作でエディの元カノだったアン(ミシェル・ウィリアムズ)は出てこないようです。アンとエディの恋愛要素が省かれる分、エディとシンビオートの関係がよりフォーカスされるのではと思います。

 さまざまなシンビオートたちと戦うことでよりアクション感が増したのも印象的です。予告の最初に出てくる飛行機での戦い。エディを演じているのはトム・ハーディですが、トム・クルーズをいじるギャグが出てきます。個人的にバイクに乗りながらヴェノムに変身する、仮面ライダーないしゴーストライダー的なシーンにわくわくしました。

ファンを熱狂させた“ヌル”の存在

 というわけでヒーローアクション映画としての期待値が上がる予告編ですが、ファンを狂喜させたのは1分6秒目あたりに映る白髪のロン毛の人物であり、その後のセリフからこの人物の名は“ヌル”であることがわかります。この予告編で明かされた情報から整理すると、このヌルなる人物は、シンビオートたちの創造主(クリエーター)であり、エディと合体してヴェノムとなったシンビオートはこのヌルから逃げるために地球へとやってきた。しかし、ヌルはヴェノムを見つけ、他のシンビオートたちを引きつれ地球へと攻めてくるわけです。

 多くのファンが驚き、そして喜んだのはこのヌルの存在が、この先ヴェノムがマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に与える影響です。ここで事情を説明しておくと、もともとヴェノムはスパイダーマンに由来するダークヒーローなので、マーベルのキャラです。ただし、スパイダーマンおよびスパイダーマン系のキャラの映画権は、ソニーが持っているため、これまでのスパイダーマン映画(トビー・マグワイア版、アンドリュー・ガーフィールド版)や、『ヴェノム』シリーズはMCUとは別の世界観(別バース)という設定でした。

 しかし、トム・ホランドのスパイダーマンだけは、ソニー映画でありながらMCUの世界観の住人という取り決めをソニーとマーベル/ディズニーがしたのでMCUに登場しています。なので、トム・ホランドの『スパイダーマン』シリーズとトム・ハーディの『ヴェノム』シリーズは、同じソニー映画でありながら違う世界観(別バース)であり、またややこしくならないように『ヴェノム』シリーズにはスパイダーマンが出てきません(恐らくこの世界の中にスパイダーマンという存在自体が“まだ”いないだろうと思われます)。

 しかしながら昨今のマルチバース設定で、こうした別世界観(別バース)がゆるくつながっているわけです。その証拠をいくつかあげると、

  1. 『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のおまけシーンで、ヴェノムがトム・ホランド/スパイダーマンのいる世界=つまりMCUに来てしまったことが示唆されます。その後、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のおまけシーンでヴェノムたちはまた元の世界に戻ったことが判明。これは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でドクター・ストレンジの魔法により、さまざまなバースにいるスパイダーマン系のヴィランがMCUに来てしまった現象に由来するものです。
  2. アニメ映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』において映画『ヴェノム』シリーズに登場する雑貨屋の女主人チェンさん(ペギー・ルー)が“実写の姿”で登場。スパイダーマンが関係する世界は「スパイダーバース」という概念において、これまで描かれてきたコミック、アニメ、映画の世界すべてつながっていることが明確化。

 というわけです。(このほか、映画『モービウス』におけるヴァルチャーというのがあるのですが、ややこしいので割愛します)というわけで、ファンが観たいトム・ホランドのスパイダーマンとトム・ハーディ演じるヴェノムの共演というのはかなり近いところまで来ているわけです。

 そして今回ヌルの登場によって、それがまた“しやすく”なったというわけです。

すでにMCUにあったヌルの痕跡

 まずヌルとは何者か? ちなみにスペルは“Knull”です。もっと知りたい方はこれで検索してください。

 すごく大雑把に言うと、マーベルの世界にはるか昔から存在する暗黒の神です。『エターナルズ』で描かれた神のような天上人(セレスティアルズ)たちが宇宙創成の際に放った光が彼の闇の世界を消したことから、セレスティアルズの一人の首を特殊な剣(ネクロソード)で斬り落とします。その後、生体の鎧ともいうべきシンビオートたちを作り出すのです。

 ここで思い出していただきたいのは映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』シリーズに登場するノーウェアという星。宇宙の巨神の斬り落とされた頭部がそのまま星になったと説明されています。

 まさにあの星ノーウェアこそ、ヌルがたたき斬ったセレスティアルズの頭部なのです。さらに映画『ソー:ラブ&サンダー』でクリスチャン・ベール演じるゴアが手にする神殺しのあの剣は、実はヌルが作った(セレスティアルズ斬首に使った)ネクロソードでした。そう、MCUではすでに原作コミックにおけるヌルがらみの要素がすでに登場していたのです。

 コミックでのデビューは、2013年のソーのコミック(Thor God of Thunder #6)。ゴアがネクロソードを手に入れる回想シーンで、黒い鎧を着た戦士として登場。この時彼がヌルという名前であるとは明らかにされていませんでした。後にヴェノムとマイルス・モラレス/スパイダーマンが共闘して、シンビオート・ドラゴンたちと戦う2018年のヴェノムのコミック(Venom vol.4 #3)で、彼の名前がヌルであることが判明しました。

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