『マル秘の密子さん』松雪泰子が夏役を演じる意義 密子の姉・鞠子の死の真相が明らかに

 密子のアトリエから盗み出された鞠子の日記についても男たちを問い詰めていた遥人。相変わらず密子への態度はふてぶてしいが、「君にとって大事な物なんだろ」という言葉には隠しきれない優しさが滲む。次期社長としてのプレッシャーが彼を冷酷にしていただけで、本当は謙一(神保悟志)譲りの思いやりのある人間なのだろう。

 一方、夏は社長になった途端、多忙を理由に火災事故の調査を進めようとせず、密子のことも会社から遠ざけようとする。立場が人を変えるというが、社長になった今、夏にとって密子はもう不要な存在となってしまったのか。

 そんな中、謙一が修理を依頼していた火災現場の監視カメラのデータが届く。小宮山が雇った男たちは火事への関与を否定しており、地上げが目的でないとしたら、誰かが謙一の命を狙って放火を起こした可能性が高い。密子はデータを確認しようとするが、中身を確認した夏が「何も映ってなかった」と言って、データが入っていたSDカードを捨ててしまっていた。

 すぐに社内のゴミ袋を漁り、SDカードを見つけ出した密子。そこに映っていたのは、燃え盛る火の中、助けを求める鞠子に背を向けて、謙一だけを救い出す夏の姿だった。そんな中、密子の頭によぎるのは謙一を殺害した罪で逮捕された坂東(黒羽麻璃央)の言葉。

「大事なのは、あの火災事故で、一番得をしたのは誰なのか?ということです」

 冷静になって考えてみれば、一番得をしたのは夏だ。謙一を助けたことで智(清水尋也)と彩(吉柳咲良)が九条開発で働けることになり、夏は全株を譲り受けて社長の座にまで上り詰めた。それに夏はあの火災現場が九条開発の建設予定地であることを知っていたという。だが、ここまで条件が揃っていても、密子は夏が放火の犯人とは思えなかったはずだ。なぜなら、夏は自分が損をしてでも他人のために行動する人間だから。それに、密子の過去を知った時、夏は「私があなたの分までちゃんと痛がるから、もう苦しまなくていい」と抱きしめてくれた。そんな夏は密子にとって、姉のような存在だった。

 しかし、密子が問い詰めると夏の態度は一変。「今後一切、九条開発に関わらないでください」とクビを宣告する。親しみを込めて、“密子さん”と呼んでいた夏だが、呼び名は“本宮さん”に変わっていた。当初は自信のなさが見た目にも表れていた夏。密子と出会ってからは服装だけではなく中身もアップデートされ、社長として相応しいカリスマ性を携えている。だが、代わりに以前のような柔らかな印象は失われ、冷酷さも感じさせる。印象が二転三転し、あらためて松雪泰子がこの役にキャスティングされた意義を感じさせる一方で、夏が密子の敵として立ちはだかるというのはあまりに悲しい展開だ。本当に夏は放火を起こした犯人なのか。最終回を前に衝撃のどんでん返しが起きた本作から最後の一瞬まで目が離せない。

■放送情報
『マル秘の密子さん』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:福原遥、松雪泰子、上杉柊平、清水尋也、志田彩良、吉柳咲良
脚本:丑尾健太郞、藤岡明子、上野詩織、ばばたくみ
演出:中茎強、小室直子、伊藤彰記、苗代祐史
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:鈴木亜希乃、柳内久仁子
音楽:Ken Arai
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
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