『南くんが恋人!?』南くんの死を受け入れたちよみ 岡田惠和脚本が描いた真意とは

 それから30年、様々な技術が発展し、本作でもちよみは文明の利器であるスマホを駆使している。だけど、人が死なないようにはなっていない。平均寿命は格段に伸びたけど、事故や病気で亡くなる人はもちろんいるし、私たちは無力にも自然災害や未知のウイルスで突然大切な人を失う悲しみも味わった。

 そして本作でも、南くんはちよみの世界から姿を消す。残された時間の中、大学バスケ部の仲間たちやちよみの友人たちに会い、しっかり伝えるべきことを伝えた南くん。ちよみと約束していた“お城”へも行き、ついには結ばれる。2人が一緒に時を重ねてきたベンチでは、ちよみが「ずっとずっと何があったって、私の心の中では南くんが恋人!」と海に向かって叫び、南くんも「ちよみ! 世界で一番幸せになれー!」と叫び返した。

 幼い頃、病気で亡くなった母が小さくなって現れたことがあると楓たちに打ち明けたチャコ(室井滋)。南くんもあの日、バイクが迫り来る中、咄嗟に遺していくちよみのことを考えたから体が小さくなったのだろう。ちよみにとって幼い頃から一緒に育ってきた南くんはもはや自分の一部。もしあのまま、南くんが突然死んでいたら、ちよみはきっと心が壊れていた。それが南くんもわかっていたから、ちよみのことが心配で心配で、神様もその思いに胸を打たれて最後の時間をくれたのではないか。

 そのおかげで、ちよみは南くんの死を受け入れることができた。だからといって悲しみがなくなるわけじゃない。南くんが消えた朝、ちよみは笑顔でリビングに現れたが、家族の顔を見た瞬間に涙が堪えきれなくなった。季節が変わり、秋が来ても息ができないほどの苦しみは続く。だけど、その度にちよみは思い出すのだ。南くんが抱きしめた時に見えるつむじが大好きだと言ってくれたことを。そんな風に誰かを愛おしく思える人生を送った南くんは幸せだ。本作は、かつて「ちよみが可哀想」と投書を送った子供たちに対する岡田からのアンサーだった。

■配信情報
『南くんが恋人!?』
TVer、TELASAにて配信中
出演:飯沼愛、八木勇征(FANTASTICS)、武田真治、加賀まりこ、室井滋、光石研、沢村一樹、木村佳乃
原案:内田春菊『南くんの恋人』(青林工藝舎刊)、『南くんは恋人』(ぶんか社)
脚本:岡田惠和
監督:宝来忠昭(テレビ朝日)、小松隆志(テレビ朝日)ほか
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
ゼネラルプロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)
プロデューサー:神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、布施等(MMJ)、村山太郎(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/minamikun/
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