『光る君へ』吉高由里子「無理」に現代人こそ共感? “推し”となる彰子に出会ったまひろ
『光る君へ』(NHK総合)第33回「式部誕生」。まひろ(吉高由里子)は道長(柄本佑)に頼まれ、彰子(見上愛)が暮らす藤壺に住み込みで働き始めることになった。まひろは早速、物語の続きを書こうとするのだが、女房たちが忙しなく行き交っているため、執筆に集中できない。宮中での暮らしに慣れず、筆が進まないまひろは、道長の反対を押し切って、家に戻って執筆することに。
第32回では、SNS上で、まひろを出迎える女房たちの冷ややかな目線に「怖い」「圧がすごい」との声があがっていた。左衛門の内侍(菅野莉央)など、まひろのことを快く思わず、あからさまに冷たい態度をとる女房もいるが、まひろを昔からよく知る赤染衛門(凰稀かなめ)やまひろに反感ではなく興味を抱く様が見受けられた小少将の君(福井夏)など、女房たち全員がまひろに冷たく当たるわけではなさそうだ。
個性豊かな女房たちが登場した第33回では、女房たちの言動というより、慣れない宮中での暮らしがまひろの悩みの種となる。吉高の演技は、不慣れな場所におかれ、思うように物語を書き進められなくなったまひろの苦悩をありありと伝えていた。
専用の部屋をあてがわれ、まひろは早速物語を書こうと試みる。だが、慣れない空間にソワソワするのかなかなか書き出せなかったり、女房たちが慌ただしく行き交うために集中できずにため息をついたりする様はとても現実味があった。
夜遅くまで執筆を続けたまひろが床に就こうとすると、大きないびきをかく者や寝相が悪い者、大きな寝言をいう者がいて寝つけない。ようやく眠れたと思えば、早朝から女房たちの務めが始まる。朝から晩まで働きづめで、執筆に集中できる時間には疲れ果ててしまって書けない。吉高の演技は大げさすぎず、控えめだが、初めての務めに戸惑いながらも懸命に励むまひろの真面目さがはっきりと伝わってくる。眠気に抗う演技は、宮中の忙しさを想像させるものでもあった。物語を書くことにどうしても集中できず、まひろは大きくため息をつき、小さくうなり、「無理」と呟く。集中できない環境で仕事をせざる得ない状況に置かれたことがある人にとって、とても共感できる呟きだったに違いない。
家に戻って執筆したいと頼み込むまひろと、それを強く反対する道長とのやりとりでは、両者ともなかなか譲らない。しかし、まひろと道長はお互いに自分たちの言葉に偽りがないこと、だからこそ譲れないことを理解し合った。実に2人らしい場面といえる。