雨穴が生み出す“何かおかしい”の恐怖 『クレヨンしんちゃん』に加えるエッセンス

 8月31日に放送される『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系)に覆面ホラー作家兼YouTuberの雨穴が、声優として出演することが発表された。『クレヨンしんちゃん』といえば、これまでのホラー回や都市伝説回はファンの間でも人気の回となっていたが、今話題の雨穴のコラボとあって大きな期待が寄せられている。

 今回脚本も手がける雨穴とはそもそも何者なのか。10代〜20代であれば一度は耳にしたことがあるかもしれないが、『クレヨンしんちゃん』を長年追っている世代の中には、初めて聞くという方もいるかもしれない。もともとは2018年にウェブメディア『オモコロ』のメンバーとしてライター活動を始めた雨穴。オカルトを題材にした作品で人気を獲得する中で、雨穴が一躍有名になったのが『【不動産ミステリー】変な家』である。YouTubeに投稿されている動画は、2024年8月30日現在までに2325万回を突破しており、後に『変な家』として書籍化された。2024年にはそれらを題材にした映画『変な家』が、間宮祥太朗と佐藤二朗のダブル主演で公開され、興収50億円超えのヒットを記録したことも記憶に新しい。

『変な家』のヒットにみる“ホラー映画”としての潮流と現代性 賛否両論の意義を考える

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 1990年にコミック連載が開始され、1992年にアニメ放送がスタートした『クレヨンしんちゃん』。本作の大きな魅力は、ポップなイラストと野原しんのすけをはじめとした登場人物たちの掛け合いやギャグ描写を軸にしつつ、時には家族愛や友情を温かく描き、子どもはもちろん、大人も楽しめる仕掛けも満載な部分にある。

 そんな老若男女を惹きつけるさまざまなエピソードがある中で、ファンの間で特に人気が高いのが「クレしんホラー劇場」と呼ばれるホラー回、都市伝説回なのだ。現在公式YouTubeチャンネルでは「『クレヨンしんちゃん』ホラーSPウィーク」と題して過去のホラー回が投稿されており、コメント欄では「ネタに落とさず最後までしっかり怖いの好き」「クレしんホラー特有のアングルゾクゾクしていい」「しんのすけがだんだんふざけなくなって行くのがリアル」といったクオリティーを賞賛する声が多く寄せられていた。

 そもそもギャグを中心とした作品であるため、突然放送されるホラー回というだけでかなりの恐怖なのだが、ホラー映画さながらに緻密に練られたストーリー構成と恐怖を煽る音楽、キャラクター演出も相まって、大人でも楽しめる完成度の高いホラーアニメとなっているのが、『クレヨンしんちゃん』のホラー回の特徴だ。

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