『降り積もれ孤独な死よ』佐藤大樹の猟奇的な笑みの恐ろしさ 描かれた親子の複雑な関係性
苦悩する犯罪者の心理を演じた佐藤大樹
愛されキャラである鈴木の裏の顔は冷酷な知能犯であり、笑顔の陰にサイコパスめいた狂気を飼いならしていた。否、虐待家庭出身の子どもたちを手にかける鈴木自身が、血縁と肉親の情の間で引き裂かれており、苦悩する犯罪者の心理を佐藤大樹は説得的に演じていた。
鈴木の灰川に対する心情、またその逆を含む父子の複雑な関係性を描くために、いくつかの異なる時制が用いられている。まずは31年前、上川周作演じる灰川青年が産まれたばかりのジュンを施設の玄関に置くまで。灰川青年は夫のDVから逃げてきた女性・深雪(小島藤子)との間に子どもを授かるが、深雪とは結婚できずやむなく赤ん坊を施設に預ける。
前述した少年時代の鈴木と灰川の邂逅。時代を下り警察官になった鈴木が勾留中の灰川と面会するシーンまで、数奇な運命を生きる父と子の逸話を複数の視点から取り上げることで、灰川邸事件の犯人である鈴木を生み出すに至った関係を浮き彫りにした。その上で花音と蒼佑の反問を通じて、灰川が身を挺して鈴木を守ったかもしれない可能性を示した。
監禁場所を突き止めた冴木が自身の内なる衝動を抑えることができず、拳を振るう場面で第6話は終わったが、引き込まれるようなクライムサスペンスの緊張感が一話を通して持続していた。灰川邸事件が良い終わり方をしないことは、7年後の現在、五味の言葉を通して明らかになっている。人間存在のダークサイドに切り込む本作が観る側に何を残すか引き続き注視したい。
■放送情報
『降り積もれ孤独な死よ』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:成田凌、吉川愛、萩原利久、佐藤大樹、仲万美、松本怜生、杢代和人、カカロニ栗谷、山下美月、黒木メイサ、野間口徹、小日向文世
原作:『降り積もれ孤独な死よ』原作・井龍一/漫画・伊藤翔太(講談社『マガジンポケット』連載中)
脚本:橋本夏
演出:内藤瑛亮、二宮崇、高杉考宏
チーフプロデューサー:岡本浩一(読売テレビ)
プロデューサー 中山喬詞(読売テレビ)、清家優輝(ファインエンターテイメント)
音楽:Jun Futamata
主題歌:あいみょん「ざらめ」
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:読売テレビ
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