『虎に翼』が問い直す“自由”になることの意味 涼子と玉のシスターフッドが互いの支えに

 『虎に翼』(NHK総合)第84話は、与えられた関係が生む束縛と自由になることの意味を問い直すものだった。

 寅子(伊藤沙莉)が美佐江(片岡凛)からもらった腕飾りは、窃盗犯の少年が身に着けているものと同じだった。事件に美佐江が関与している可能性を知り、寅子は頭を悩ませる。帰り道で、寅子は優未(竹澤咲子)が同級生と話しているのを見かける。打ちとけない優未に同級生たちは不満を口にする。彼女たちが教師に頼まれて仲良くしていると知った優未は、感謝しつつも「お互い無理をしても誰も幸せじゃないし、そこから友達になるのは難しいと思う」と言って去った。

 優未に友だちができないことを寅子は心配していたが、娘は母が思う以上に自分自身を理解していた。気落ちしていないかと変顔をした寅子に、とっさに変顔で返す優未は、母の悩みを感じ取っていたかもしれない。そのけなげさにどれだけ寅子は救われただろう。優三(仲野太賀)について知ったことで、優未の中によりどころができ、強さが芽生えたと思われる。寅子と優未はもう大丈夫と思わせる一幕だった。

 寅子は新潟へ向かった。玉(羽瀬川なぎ)から障がい者施設を紹介するよう頼まれ、その結果を伝えるためだ。「私がいなくなればお嬢様は自由になれるんです」と話す玉は、涼子(桜井ユキ)を自分の世話から解放したいと願っていた。

 結論から言うと、新潟には定員の空きがなく、神奈川なら玉が望む施設が見つかるかもしれない。だがはたして、その選択が玉と涼子にとって最善と言えるかどうか。悩んだ末に寅子は「2人の問題は2人に任せる」と玉と涼子の手にゆだねた。

 開店前の「Lighthouse」で、長年連れ添った主家の令嬢と従者は、胸の奥にある思いを吐露した。「耐えられないんです。せっかく自由になれたお嬢様を、私が縛りつけていることが。私がいなければお嬢様は今頃、自由な世界でなりたい何かになれていたはず」。涼子の自由を奪ってしまったと自分を責める玉に、いつになく強い口調で反論する涼子。「あなたにしてもらったことを返しているだけ」と言う涼子は、夫の胤頼と離縁したのは、玉のせいではないと話す。

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