『降り積もれ孤独な死よ』成田凌が犯人? 有力容疑者の退場で覆されるミステリーの定石

 花音が階段から突き落とされたことで疑いの目を蒼佑に向けさせ、それとなく傷害事件との共通項を示唆した上で、実は冴木が傷害事件の加害者であると明かすことで衝撃が倍化した。第3話の後半は、幼い冴木が受けた虐待と悲惨な家庭環境を強調することに費やされていた。

 冴木と蒼佑が背負った恐怖と痛みは、二人が血を分け合った兄弟であることを物語る。加害者の暴力衝動を受け継いだことも。自らの内にあるいまわしい血を冴木と蒼佑は自覚しているが、自覚しても止められない。「どうしようもないほど壊れてる」自分自身を呪いながら、冴木も蒼佑も苦しんでいた。

 冴木の沈痛な独白を聞いた花音の「私たちはたしかに壊れているのかもしれないけど、壊したのは自分じゃない。むしろ私たちは誰かにつけられた傷を、必死にふさごうとしながら生きている」は、泣くことができない花音自身に向けられたものでもある。同様に、困難な子ども時代を過ごし、灰川という“父”によって家族のぬくもりを知ったかつての子どもたちに共通する心情でもあるだろう。

 蒼佑が犯人である可能性は払拭され、新たに顔に傷のある男が捜査線上に浮上する。再会の場に姿を見せなかった神代健流(杢代和人)はその男なのか。1話を費やして児童虐待を被害者・加害者それぞれの視点から描いたことは、それが本作の重要なテーマであるからにほかならない。闇を背負った主人公が救いを見出すことを願うばかりだ。

■放送情報
『降り積もれ孤独な死よ』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:成田凌、吉川愛、萩原利久、佐藤大樹、仲万美、松本怜生、杢代和人、カカロニ栗谷、山下美月、黒木メイサ、野間口徹、小日向文世
原作:『降り積もれ孤独な死よ』原作・井龍一/漫画・伊藤翔太(講談社『マガジンポケット』連載中)
脚本:橋本夏
演出:内藤瑛亮、二宮崇、高杉考宏
チーフプロデューサー:岡本浩一(読売テレビ)
プロデューサー 中山喬詞(読売テレビ)、清家優輝(ファインエンターテイメント)
音楽:Jun Futamata
主題歌:あいみょん「ざらめ」
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:読売テレビ
©井龍一・伊藤翔太/講談社 ©ytv
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