『虎に翼』伊藤沙莉の久しぶりの顔芸が炸裂 少しずつ埋まっていく寅子と優未の溝

 寅子(伊藤沙莉)は、高瀬(望月歩)が森口(俵木藤汰)に対して起こした暴行事件を本庁に報告し、書記官としてきちんと処分することを告げた。間を取り持つことで穏便に済ませようという弁護士・杉田太郎(高橋克実)からの提案を断ってまでもだ。そこには人と関わることを諦められない、諦めない寅子の意地があった。波風が立とうとも、それでも。『虎に翼』(NHK総合)第80話では、高瀬と向き合うことが自然と優未(竹澤咲子)との溝を少しずつ埋めていくことに繋がっていく。

 兄の戦死の報せを受け入れられないでいる高瀬。語りたくないし、語られたくない。乗り越えたふりをするしかない。戦争で優三(仲野太賀)を失った寅子にとっては、高瀬がかつての自分、もしくは今の自分のことのような気がしてならなかった。だからこそ、心の弱った人の傷を抉って、心に出来たカサブタを事あるごとに悪気なく剥がしていくような人たちに、借りを作ってほしくない。頭を下げて言いなりになってほしくない。この先、寅子がいなくなったあとも、縛られることのないように。怒りたいときに、怒ることができるように。自身の予想と一致し、処分の意図に納得した高瀬には笑みが浮かんでいる。

 夜中、逮捕状に氏名と捺印を佐田家にもらいにきた高瀬から、寅子はお礼にとキャラメルを譲り受ける。夜分に押しかけてしまっていることで娘さんを起こしているかもしれないということからのおやつのキャラメルだろう。案の定、毎回優未は起きており、そのことを寅子も気にしている。赤子の頃から目が覚めるとなかなか寝付けなかったから。襖の奥から見ている優未に、明日のおやつにと寅子が話しかけると、優未から「今、食べちゃ駄目? だって、美味しいもの一人で食べてもつまんない」という思いがけない言葉が返ってくる。

 寅子の脳裏には、優三と河原でかぼちゃ饅頭を分けあって食べたあの日の思い出がフラッシュバックする。キャラメルを口に入れて、もぐもぐしながら微笑み合う2人。寅子は優三との家族写真をキャラメルの箱の隣に並べ、優未が知りたがっていた父親のことを話し出す。すぐ「ごめんなさい」する人だったこと。言いたいことは全て押し殺して人に合わせて謝ってしまうこと。不器用で優しいところも優未は似てしまったのかも、と寅子は声を詰まらせながら優未に伝える。

 そして、優未がもう一つ父親に似た緊張するとお腹がゆるくなってしまうところ。その緊張をほぐす方法として、久しぶりに寅子の面白い顔=顔芸が飛び出す。目をひんむき「ほ」の顔をする寅子に、真顔の優未。愛想笑いに、それでもまだ埋まっていない溝を感じさせるものの、次週の予告では寅子の面白い顔に、優未も全力で愛らしく応えており、少しずつ、少しずつ2人の溝がなくなっていく未来が見える。

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