『虎に翼』“表情”で語る伊藤沙莉の表現力 「はて?」に向き合い続けた寅子の成長
NHK連続テレビ小説『虎に翼』第13週「女房は掃きだめから拾え?」が放送された。寅子(伊藤沙莉)は特例判事補として家事部の審判も担うことになり、忙しい日々を送っていた。あるとき、家庭相談をする中でひょんなことから梅子(平岩紙)と再会。梅子は遺産相続問題の渦中にいた。裁判官の仕事に加え、家庭裁判所の広報活動、当番の仕事とますます忙しくなる寅子。それでも寅子は前進し続ける。
不条理を受け入れずに戦えば、その道は「地獄」かもしれない。それでも不安や理不尽や疑問と衝突しながら、なんとか一歩ずつ前に進んできた。同じ志を持つ友との別れ、弁護士としての挫折、戦争、親族との死別など実に様々なことを経験し、今の寅子は猪爪家の大黒柱であり、仕事でもたくさんのことを任せてもらえるように。今でも壁にぶつかることはあれど、これまでのことを思い返せば、着実に前に進んだと感じる。今回はそんな寅子を振り返りつつ、演じる伊藤沙莉の魅力に迫りたい。
寅子といえば「はて?」と疑問に思ったことを口に出していく姿勢が印象的だ。それは時に軋轢を生み、時に理解し合うことを促し、様々なかたちでまわりに影響を与えてきた。序盤での寅子は女性が“声を上げる”ことが日常とは言えない時代に暮らしていたため、こうした振る舞いがお見合いに影響を与えたこともあった。あるとき、はる(石田ゆり子)や花江(森田望智)が「スンッ」としていることに気づき、その振る舞いに疑問を持つことも。
だが後半になるにつれ「はて?」を共有し合える学友の存在や「はて?」と思った時に寅子らしくあることを認めてくれる優三(仲野太賀)との結婚により、寅子を取り巻く環境には変化が訪れる。さらに戦後の憲法改正で、「すべての国民は法の下に平等である」ことが保証され、時代も急速に変わっていった。寅子はそんな変化の中でもがきながらも前に進み、いつしか母となり、一家の稼ぎ頭となり、職場でも実に多くの仕事をさばいていく。