『虎に翼』岡本玲の凄まじい豹変ぶり “正義の罠”にはまる寅子が満智を責められない理由

 ようやく弁護の依頼を担当できるようになり、前のめりになっていたことや、立て続けに理不尽な境遇に置かれている女性からの訴えを聞いたこと。憔悴しきった満智の様子が同情心を駆り立てたことなど、様々な要因が重なり、寅子は大事なことを見落としてしまう。満智の主張を信じて疑わず、法廷で熱弁を振るい、原告の請求を棄却する判決を勝ち取った。だがその後、満智が嘘をついており、おなかの子も4歳の長男も夫の友人との子であることが明らかに。おなかの子に関しては妊娠のタイミングと、亡き夫の病状が合わず、調べればすぐに分かることだった。

 弱々しく見えた満智はどこへやら。着物も化粧も以前より派手になった満智は「てっきり目をつむってくださってるのだとばかり」と開き直り、「先生もご存知のはずですよ? 女が生きていくためには、悪知恵が必要だってこと」と寅子に迫る。寅子は何も言えなかった。自分も社会的信用を得るために、優三と結婚したからだ。どこかでずっとその後ろめたさを抱えている寅子には、満智を100%責めることができない。嘘を見抜けなかった自分自身の過失として重く受け止める。

 だけど、社会的信用のために結婚するのはそんなに間違ったことなのだろうか。よね(土居志央梨)のように己の信念を曲げない生き方はたしかにカッコいい。でもあのまま結婚しなければ、寅子は一生法廷に立てない可能性だってあった。それに優三には寅子に対する思いがある。寅子が暴走気味になった時も、「決めつけて突っ走ると思わぬヘマをするから」と深呼吸を促してくれた優三。一見頼りないけれど、本当は誰よりも冷静に物事を俯瞰している。そんな優三に後から少しずつ愛情が芽生えていくかもしれない。あなたが正しいと思っていることは本当に正しいのか、間違っていると思っていることは本当に間違っているのか。本作は幾度となく「本当に?」と問いかけてくる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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