『虎に翼』が視聴者に考えさせる“男女の差”とは何か 寅子の“契約結婚”は許される?

『虎に翼』寅子の“契約結婚”は許される?

 結婚が決まった途端、弁護の依頼もあって、ついに法廷にも立てて、うまくことがまわりはじめた。そして新婚初夜、寅子に指一本触れないと宣言しながらも、つい、寅子のことが好きだと言ってしまう優三。そこでほだされて、今後、触れてもいいことになるかもしれないが、初夜はとりあえず、ふたりはただ布団を並べて眠りにつく。

 この場面がとても気になった。優三に「指一本触れない」と言われた寅子は「そう……あっ そうよね」と反応するのだが、そのとき彼女は何を思ったのか。結婚したら漏れなくついてくるであろう子作りについて寅子はどう思っていたのだろうか。それも含めて開き直って受け入れるつもりだったが、いざとなると緊張してしまっていたのか。そしてそれはないと知ってホッとしたのか。

 ほかの結婚相手ならともかく、優三は寅子の思惑を知ったうえで引き受けたのだから、そもそも同じ部屋で寝なくてもいいような気もする。でも、子づくりもする前提ではあるのだろうか。寅子は法律家にもかかわらず、何も決めずに新婚生活をはじめてしまったのか。

 寅子と優三の社会的地位を得るための契約結婚は、大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年/TBS系)のようだと話題になった。『逃げ恥』や古沢良太が脚本を書いた『デート〜恋とはどんなものかしら』(2005年/フジテレビ系)のように結婚する気のない男女が、社会生活を送りやすくする便宜のため結婚するにあたって、事前に生活のルールを決めるところが面白みであった。『虎に翼』でも寅子が結婚をどういうものと認識し、どこまでを許容し、どこまでを許容しないか、そういうところがあれば、優三と寅子が対等になれる気がするのだが、そこは第8週に持ち越しているのかもしれない。基本的に誰にも事情があって悪い人はいないように慎重に描かれていて、申し分はない。

 目下、寅子は、理解ある伴侶を得、経済的に裕福な実家に住み、家事の手もはる(石田ゆり子)が助けてくれそうで、結婚にあたって負担がほぼないこととなった。一方、花岡は苦渋の決断をし、友人たちには責められ、優三は従来の恋ごころが叶わないことに悶える。仕事に邁進したい女性にとっては夢のような展開が、男はつらいよ、になっていることが、男も女も関係なく社会的弱者に寄り添う弁護をしたい寅子の考えにいまのところはそぐわないのだが。やがて寅子が気づきを得ていくいまは過渡期なのだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜~金曜8:00~8:15、(再放送)毎週月曜~金曜12:45~13:00
BSプレミアム:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜8:15~9:30
BS4K:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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