『光る君へ』柄本佑が変わらないために変わった第二期の道長に 花山院が意外な形で再登場
とはいえ、道長が心置きなく話せる相手の前では、これまでと変わらぬ道長らしさが感じられる。柄本は気張らない身のこなしによって、道長と姉・詮子(吉田羊)の関係性、友人との関係性を見せてくれた。伊周一派を封じたいと除目に口を出す詮子に「道隆の兄上のようなことはできませぬ」と道長は断る。詮子と「できませぬ」ときっぱり断る道長のやりとりは面白かった。この時の2人は女院と右大臣ではなく、姉と弟に映る。
公任、斉信(金田哲)、そして行成(渡辺大知)との場面では、道長はのんびりした口調で「偉くなるのは大変だなあ」と呟いた。4人が語らう内容は政治や出世に関することだが、右大臣となっても今まで通りの道長であるからこそ、4人の友情は変わらないのだと感じられる。「俺もそろそろ参議にしてほしいなあ」と口にした斉信への、「ああ〜……すまぬ」という返答もまた面白かった。不貞腐れる斉信に「この度は許してくれ」と申し訳なさそうに伝える道長の表情を見れば、道隆のような人選を避けることに努めた道長にとって、俊賢(本田大輔)と斉信のどちらかを選ぶのは難しかったことが分かる。
柄本は「君かたり」にて、道長が政治に向かえる理由について「政とは家だ」と語った父の存在とまひろとの約束をあげている。思いがけず政の頂きに立った道長が真摯に務めを果たす背景には、やはりまひろの存在がある。道長は一条天皇との会話で、まひろが一条天皇と対面し、政への意見を述べたことを知る。まひろの名を耳にした途端、道長は息を呑んだ。目を瞬かせ、息をつく様に、道長がさまざまな感情でまひろを思っていることが想像できる。「お上に対し奉り、畏れ多い事を申す者だと思いまして」という言葉は平常心を取り繕う言葉にも聞こえるが、純粋に好奇心旺盛なまひろを表しているようにも思えた。
「あの者が男であったら、登用してみたいと思った」という一条天皇の言葉を受け、道長は決心したように前を向く。そして道長はまひろの父・為時(岸谷五朗)を従五位下に推挙した。道長は礼を言う為時に向かって「お上の御為に尽力されよ」とだけ言い伝えてその場を立ち去るが、その面持ちはどこか満足げに見えた。
“第二期に入る”と柄本が表現した通り、これから回を重ねるごとに道長は少しずつ変化していくことだろう。けれど、まひろとの約束は色褪せず、またまひろへの思いも変わらないはずだ。公卿の頂点に立った道長とまひろは再び邂逅するのか。政治の場での活躍とともに気になるところだ。
第19回では、伊周と隆家(竜星涼)の場面も印象強かったのではないだろうか。特に物語終盤に伊周が見せた表情は同情を誘われる。先週の「君かたり」で三浦が「すごく今まで由緒正しきというか、非常に優雅で美しい伊周としてやってきたのがどんどん崩れていく序章です」と語っていた通り、これまでの強気な表情が一変、伊周は女に裏切られたと嘆き、鼻をすすって泣いていた。弟・隆家はそんな伊周を強引に女の家へ連れていき、別の男をこらしめてやるつもりで矢を射るが、その相手はなんと花山院(本郷奏多)だった。道隆(井浦新)亡き後の中関白家の更なる転落が待ち受ける。
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK