『怪獣8号』は“世界的な”アニメ作品に まるで『攻殻機動隊』草薙素子のようだったミナ

 TVアニメでは、西尾鉄也によるキャラクターデザインも持ち味になっている。松本直也の絵がベースにありながら、やや面長になったり目が大きくて端が尖ったりした顔立ちになって、どことなく『NARUTO-ナルト-』感を漂わせている。西尾がキャラクターデザインを手がけたアニメ版の『NARUTO -ナルト-』は世界中にファンがいて、強い印象を残している。そうした印象に引っかかるところがある『怪獣8号』は、世界でもきっと話題になるだろう。

 第2話の段階で、漫画の2話と3話をいっきに描いて、四ノ宮キコルの登場まで進めたところには、キコルが準主役級の存在であることを、アニメで初めて『怪獣8号』に触れる人にも早いうちに知ってもらおうといった意識が感じられる。第1話も第2話もアニメのページ数で共に60ページほどとバランスは悪くないが、展開としてはカフカの覚醒という見せ場の後に、キコルとの驚きの出会いがあって印象が分散される。これは、『怪獣8号』という作品をある種の群像劇として描いていく意識があったからなのかもしれない。

 『怪獣8号』の漫画が登場した時、アラサーのカフカが夢に再挑戦するストーリーといった受け止められ方がされ、同じような境遇の人たちを喜ばせた。連載が進む中でそれが変わり、キコルや保科宗四郎といった登場人物たちがそれぞれに重荷を背負いながら、怪獣と対峙していく物語になった。キコルの存在を早々に際立たせておくことで、カフカだけの物語ではないと知ってもらい、広い層の関心を集めようとしたのかもしれない。

 TVアニメは、第3話以降でカフカや市川レノが防衛隊の入隊試験に挑むことになり、ストーリーに大きく絡む難敵との邂逅もある。さらにカフカとキコルの関係が深まるにつれ激しいバトルも繰り広げられていく。そして3番隊副隊長の保科宗四郎も本格的に登場してくる。漫画のままならその中でミナの印象がやや後退気味になるが、TVアニメではカフカとの幼少期のやりとりが多めに描かれ、現在のミナの心情をうかがわせる描写もあって正ヒロインの座を維持させようとしている。

 ミナは防衛隊の序列では雲の上の存在で、カフカが本筋で絡むのはキコルであり相棒的な意味合いではレノが傍らの位置を奪い合う。そこにどれだけミナが絡んでくるかによって、ミナのファンになった視聴者を離さないまま進んでいけるかが決まってくる。声を演じる瀬戸麻沙美のファンも含めて、アニメの制作陣はミナに対してどのような差配を見せるのか。

■放送情報
『怪獣8号』
テレ東系:毎週土曜23:00~放送
BSテレ東:毎週土曜24:00~放送
AT-X:毎週日曜22:00~放送
アニマックス:毎週土曜21:00~放送
キャスト:福西勝也(日比野カフカ/怪獣8号役)、瀬戸麻沙美(亜白ミナ役)、加藤渉(市川レノ役)、ファイルーズあい(四ノ宮キコル役)、河西健吾(保科宗四郎役)、新祐樹(古橋伊春役)、河本啓佑(出雲ハルイチ役)、武内駿輔(神楽木葵役)、千本木彩花(小此木このみ役)
原作:松本直也(集英社「少年ジャンプ+」連載)
監督:宮繁之、神谷友美
シリーズ構成・脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン・総作画監督:西尾鉄也
怪獣デザイン:前田真宏
美術監督:木村真二
色彩設計:広瀬いづみ
3D監督:松本勝
撮影監督:荒井栄児
編集:肥田文
音響監督:郷文裕貴
音楽:坂東祐大
オープニングテーマ:YUNGBLUD「Abyss」
エンディングテーマ:OneRepublic「Nobody」
怪獣デザイン&ワークス:スタジオカラー
アニメーション制作:Production I.G
©防衛隊第3部隊 ©松本直也/集英社
公式サイト:https://kaiju-no8.net
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/KaijuNo8_O

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