仲野太賀が大河主演を務める理由 『豊臣兄弟!』秀吉役にどんな俳優が来ても問題なし?

 3月12日、仲野太賀が2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で主演を務めることが発表された。

 主演といっても演じるのは兄・秀吉ではなく、弟の秀長。戦国時代ファンであれば、誰もが知っている人物だろうが、歴史の教科書に必ず記載されているような人物ではない。戦国の英雄・秀吉ではなく、その弟を主役としたところに本作の面白さはありそうだ。ドラマ評論家の成馬零一氏は、「仲野太賀さんが秀長なら間違いない」と太鼓判を押す。

「『仲野太賀が出演していればその作品は面白い』と言っても過言ではないほど、いまもっとも信頼できる俳優の一人だと思います。直近作の『いちばん好きな花』(フジテレビ系)で演じた赤田は、登場シーンは決して多いわけではないのに、彼がいまどこで何をしているかが気になってしまう存在でした。確かに生きている人間として私たちと地続きの世界にいる。それは近年の出演作である『初恋の悪魔』(日本テレビ系)や、『拾われた男』(ディズニープラス)、『季節のない街』(ディズニープラス)でもそうで、物語では描かれていない人物の実生活を想像させてしまう力が彼にはあります。仲野さんは父に中野英雄さんを持つ、いわゆる2世俳優です。同じ2世俳優でいうと、柄本佑・時生兄弟(父・柄本明/母・角替和枝)や、寛一郎さん(父・佐藤浩市)がいますが、いずれも“庶民”を演じるのも抜群に上手い。幼少期から身近な演技巧者を知っていること、芸能の場に触れているからこそ表現できることなのかもしれません。多くの歴史物語では、秀吉は“スター”で、秀長は秀吉を支える“日陰者”というのが一般的なイメージでした。これまでの仲野さんの出演作を振り返っても、そんなスターを補佐する役柄は間違いなく活きると思いますが、もしかすると従来のイメージ像を覆す真逆の豊臣兄弟の性格になる可能性もあります。いずれにしても仲野さんならどちらにも対応できると思うので、秀吉ではなく秀長を主人公に据えるのも納得です」

 となると、気になるのは秀吉を誰が演じるか。制作統括の松川博敬氏は、まだキャスティング前であることを明かし、「仲野さんとのコンビネーションを重視して、“豊臣兄弟”と言った時のワクワクした感じ」を決め手にすると語っている。仲野との年齢バランスや、過去の共演者など、いろんな俳優を想像してしまうが、一体誰になるのか。成馬氏はこの「想像すること」こそが、制作陣の狙いなのではないかと続ける。

「タイトルにしている以上、秀吉ももう一人の主役であることは間違いないと思います。だからこそ、あえて同時に発表せずに、視聴者に想像させる手段はうまいなと(笑)。『鎌倉殿の13人』の際、脚本の三谷幸喜さんがプロ野球のドラフト会議のようにキャストを発表していくのが話題となりましたが、近年の大河ドラマは放送前から視聴者を楽しませる仕掛けがうまく効いているなと思います。本当かどうかはわかりませんが、まだキャスティング前なのであれば、視聴者の予想の声ももしかしたら参考にするかもしれませんね。近年の秀吉はどうしても敵側として登場することもあり、明るい人気者キャラというよりもどこか曲者、極端にいうとサイコパスな人物造形にされていました。『麒麟がくる』の佐々木蔵之介さん、『どうする家康』のムロツヨシさんの秀吉が、記憶に新しい人も多いと思います。主人公としての秀吉は、1996年放送『秀吉』の竹中直人さんまで遡りますが、30年の時を経て、再び“明るい”秀吉に本作ではなるのではないでしょうか。となると、コメディも演じられる人、無邪気な姿が似合う人、でも仲野さんより少し歳上で……といろんな俳優が頭に浮かびます。個人的な願望で言えば、柳楽優弥さん、少し歳上過ぎますが大泉洋さんあたりの秀吉は見てみたいなと思います。仲野さんは受けの芝居も非常に巧みなので、どんな俳優が来ても問題ないというところも主演に抜擢した理由のひとつのように思います」

 2024年の『光る君へ』は平安時代の紫式部、2025年の『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は江戸時代中期を舞台の蔦屋重三郎と、大河ドラマに多い戦国・幕末から離れた“変化球”作が2作続く。『豊臣兄弟!』は2年を経ての“王道”戦国時代が舞台となる。成馬氏は脚本を担当する八津弘幸の力が発揮されるのではと続ける。

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