『相棒』右京が叫んだ“大人の責任” 点と点がつながる警察内でのパワハラ事件

 このような自分より弱そうな人間を見つけては見下し、何をしてもいいと思っている大人たちは、残念なことにたくさんいる。本城も勤め先の先輩からひどいことを言われたり、あわや殴られそうになったりしている。そんな中で光るのが、右京や「トリオ・ザ・捜一」の言動だ。芹沢(山中崇史)は自殺した警察官の同僚から署長のことを聞くと「施設で育ったから常識がない? あの署長のほうこそ非常識でしょ」と伊丹(川原和久)と一緒になって顔をしかめ、憤った様子を隠さなかった。また、人生に絶望し、最後は自殺をはかろうとする山田に右京は「罪を償えば、必ずやり直せます」と声をかける。でも大人をほとんど信用してこなかった山田には響かず、逆に綺麗ごとだと返されてしまう。それでも「綺麗ごとでも信念を伝えることは大人の責任です」と右京は体を震わせながら叫んだ。

 どんな人が親か、どこで育ったかというのは人格形成に重要ではあるが、すべてではない。それは、人格者であろう征志郎から生まれたはずの息子の姿を見れば明らかだ。右京も小さい頃は、山田と同じようにひとりぼっちであったと言っている。それなのに右京と、犯罪を犯してしまった山田は大きく違う。自分で行動を選べるようになってから、どんな人と交流し、何を考え、何を信念とするのかを決めることが生きていく上では大事であることを、右京は自身の姿を通して教えてくれていた。山田の周りにもっと右京たちのような大人がいれば、と思わず考えてしまう。

 事件は無事に解決したが、右京の心はなかなか晴れない。山田とはじめて出会った日のように雪が降っていた夜。特命係の部屋でひとりチェスに興じる右京の顔は、なんだか悲しく見えた。少年に道を示すべき大人として、力及ばずだったことを嘆いていたのだろうか。

■放送情報
『相棒 season22』
テレビ朝日系にて、毎週水曜21:00〜放送
出演:水谷豊、寺脇康文、森口瑤子、鈴木砂羽、川原和久、山中崇史、篠原ゆき子、山西 惇、田中隆三、松嶋亮太、小野了、片桐竜次、杉本哲太、仲間由紀恵、石坂浩二、美村里江、新納慎也、真飛聖ほか
脚本:輿水泰弘
監督:権野元
制作:テレビ朝日/東映
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
公式X(旧Twitter):@AibouNow
公式Instagram:@aibou_official

関連記事