『さよならマエストロ』最後のコンサートで俊平が粋な演出 「カルメン」に通じる名曲は?

 第1話で響(芦田愛菜)が応対した富子(白石加代子)はオーディオルームの常連。第5話で、響は富子からある曲のタイトルを教えてほしいと頼まれる。亡き夫との思い出の曲は一聴したところ「ハバネラ」そっくりだが、富子は「ハバネラ」ではないと言う。響は大樹(宮沢氷魚)に尋ねるなどして探し回るが、いっこうにわからない。富子が知りたがっていた曲は金井克子の「他人の関係」だった。同曲は1973年(昭和48年)のヒットで情熱的な恋の歌。〈大人同志の恋は小鳥のように/いつでも自由でいたいわ〉と歌う歌詞はどこか「ハバネラ」を彷彿とさせる。

 響が「他人の関係」に思い当たったのはオーディオの資料整理をしている時だった。もしホールがなくなったら富子がオーディオルームを利用することもなくなるし、響が曲名を探し当てることもできなかっただろう。20年の時を経て疑問が解消したカタルシスはともかく、楽譜の保管も含めて一つの文化施設を閉館することは、付随する有形無形の資産を失うことであるという教訓がここから導き出せる。

 女心に疎い俊平であるが、瑠李に向けて言った「どんな役を演じる必要もありません。あなたはそのままでとても素敵な人です」は、どんな相手も振り向かせる力があった。近藤に指揮棒を渡した粋な計らいもそうだが、自信がなくて自分を肯定することができなかった晴見フィルの団員たちと音楽を通して向き合うことで、俊平は本人も気づいていない魅力を引き出している。ただ美しい音楽を奏でるのでなく、音に表れる人間性を描いているのが本作の美点かもしれない。

■放送情報
日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:西島秀俊、芦田愛菜、宮沢氷魚、新木優子、當真あみ、佐藤緋美、久間田琳加、大西利空、石田ゆり子、淵上泰史、津田寛治、満島真之介、玉山鉄二、西田敏行
脚本:大島里美
音楽:菅野祐悟
主題歌:アイナ・ジ・エンド「宝者」(avex trax)
撮影監督:神田創
音楽監修:広上淳一(東京音楽大学)
全面協力:東京音楽大学
企画プロデュース:東仲恵吾
プロデュース:益田千愛
演出:坪井敏雄、富田和成、石井康晴
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/sayonaramaestro_tbs/

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