『ウツボラ』桜と溝呂木の本当の関係は? 前田敦子が強欲でしぶとい“ファム・ファタル”に
そのうちに、桜、朱に続く、第三の女性の存在が示されてくる。そんな情報が増えるたびに、深読みの連続で、ミステリーが余計に迷宮入りしてしまいそうになったが、桜と名乗るこの女性の溝呂木への気持ち、強い執着心の元にあるものがわかれば、謎が少しずつ解けていくような感覚があった。そして最終的には、桜にとっての一番の歓びが何なのかも見えてくる。
それにしても、官能的なサスペンスなだけあって、溝呂木は女たちからとにかくモテる。説得力がなければ、なかなか見進めていくのが難しいところがあるが、そこは北村有起哉、簡単には説明できないタイプの色気がちゃんと漂っているし、しかも美しい女性たちを目の前にしたときに、簡単に流されてしまう「空虚感」が、妙に生々しい。そして、彼ら彼女らの愛の営みにも、なんらかの謎が仕掛けられているような気もしてくる。
一回観ただけでは、このミステリーにちりばめられた謎のすべてを把握できない作品だからこそ、観終わった後に、ここは何だったのか、あそこはどういうことなのかと反芻したくなる。最後まで観た人ならば、この文章にも、ネタバレに気を使って曖昧になってしまった表現の中にも、謎を紐解くヒントが隠されていることに気付くだろう。
世にファム・ファタルものはたくさんある。謎めいた桜と、危険をわかりながらもふらふらとそれに近づいてしまい、流されやすい溝呂木の危うい関係性からは、パク・チャヌクの『別れる決心』などを思い起こさせるものがあった。
しかし、観終わったときの感覚は『別れる決心』とも違っていた。自らが儚く消える代わりに、相手に死ぬまでぬぐい切れない強い記憶を焼き付けるという意味で残酷な(これは誉め言葉である)ファム・ファタルもいるが、桜はなかなかに自分の欲望に忠実で強欲でしぶといほうのファム・ファタルである。そして、そこが個人的には気に入っている。
■リリース情報
『WOWOW 連続ドラマW-30 ウツボラ』
2月2日(金)DVD-BOX発売
価格:12,870円(税込)
【映像特典】
・このドラマは必ず2度見たくなる! ~ドラマ「ウツボラ」 俳優たちによる伏線回収~
#1 前田敦子(三木桜・藤乃朱役)の考察
#2 北村有起哉(溝呂木舜役)の考察
#3 平祐奈(溝呂木コヨミ役)の考察
#4 おかやまはじめ(望月剛役)武田航平(海場芳嗣役)の考察
#5 雛形あきこ(野宮愛役)の考察
#6 藤原季節(辻真琴役)の考察)
#7 渡辺いっけい(矢田部理役)の考察
#8 このドラマは必ず2度見たくなる! ~ドラマ「ウツボラ」 平祐奈が聞く!事件解決編~
・スポット(5秒(A/B)/15秒/30秒/60秒)
出演:前田敦子、藤原季節、平祐奈、おかやまはじめ、武田航平、雛形あきこ、渡辺いっけい、北村有起哉
原作:中村明日美子『ウツボラ』(太田出版刊)
監督:原廣利
脚本:小寺和久、井上季子
音楽:岩本裕司、前田恵実
製作:WOWOW、The icon
発売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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