『アクアマン』シリーズが魅力的な映画となった理由 娯楽要素の裏にある重要なメッセージ

 ワーナー・ブラザースによるDCコミックス原作映画が、ジェームズ・ガンとピーター・サフランが統括する新しい体制「DCスタジオ」によって変革され、さらに本格的なユニバース化を遂げようとしている。『アクアマン』(2018年)続編の『アクアマン/失われた王国』は、ヒットメイカー、ジェームズ・ワン監督と、彼のプロダクションによる、前作からの製作環境を引き継いでおり、体制移行前の終盤となるシリーズ作品となりそうだ。

 好評を得ている主演のジェイソン・モモアが、今後も引き続きアクアマン役を演じることについては、ピーター・サフランが本作『アクアマン/失われた王国』のヒット次第であることを示唆しているものの、現時点では不透明だ。ここでは、そんな本作の内容を振り返りながら、『アクアマン』シリーズを評価しつつ、描かれたメッセージを読み取っていきたい。

 前作『アクアマン』は、驚きをおぼえる内容だった。ヒーロー作品として王道的なストーリーではあるのだが、とにかくスケールが凄まじく大きいのである。同作公開の1年ほど前に発表された『ジャスティス・リーグ』(2017年)では、単独ヒーロー作品の前にアクアマンがヒーロー連合の一員として、すでに登場していたこともあり、スーパーマンやバットマンのような、すでに映画でお馴染みとなっているヒーローの作品ほどには力を入れないのではという予感もあった。

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 しかし、そんなことは全くなかった。公開された『アクアマン』は、VFXの物量に圧倒される、ファンタジックで壮大な超大作だったのだ。これは観客としては、嬉しい誤算だったのではないか。これからはDC映画もマーベル・スタジオのように全体のマネージメントが厳しく管理されることになりそうだが、この、一作一作でクリエイターがそれぞれに大ヒットを狙う、ある意味での“どんぶり勘定”こそが、いままでマーベルと差別化される魅力だったように思える。

 そして、なんといっても、先鋭的なホラー映画シリーズや『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)などを成功させ、湯水のように演出のアイデアが湧き出し、飛ぶ鳥を落とす勢いのジェームズ・ワン監督本人がヒーロー作品を手がけるという試みもエキサイティングだった。監督自身は、ヒーロー作品として『ロード・オブ・ザ・リング』のような世界観を表現したかったということだが、まさにそれも納得といえる、圧巻の映像演出がなされていた。海の中を縦横無尽に移動する“ライド感”も評価されている。

 さらに、アクアマンを演じるジェイソン・モモアの豪快かつ愛嬌のあるキャラクターを活かして、ユーモアが溢れる内容になったのも、観客の心をつかむ大きな要因となった。現時点までのジャスティス・リーグのなかでは、バットマンやスーパーマンよりも、むしろアクアマンやワンダーウーマンの方がキャラクターとしての魅力を強く放っているように思えるのである。

 さて、その続編たる本作の内容はどうなのかというと、ほとんど目先を変えたものにはなっていない。古代の海底遺跡という新要素が登場するものの、前作同様、海底都市アトランティスの危機を、アクアマンとその仲間が救うといった流れで、引き続きアクアマンの命を狙う「ブラックマンタ」などとの戦いが描かれる。表面的な部分では、もはや“繰り返し”ともとれるストーリーに終始しているといえよう。

 凡百の監督、クリエイターが、このプロットを料理すれば、おそらく没個性的で退屈な作品になってしまうことは避け難いはず。だが、そこはさすがのジェームズ・ワン監督。それでも全編しっかり楽しめるものに仕上がっているのだ。その理由の一つには、ストーリーそのものよりも、それぞれのキャラクターの特性をいきいきと表現することに注力している点が挙げられる。

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