【聖地巡礼】『呪術廻戦』「渋谷事変」の場所を訪れて分かった想像以上の作り込みと再現度
観た者にとってトラウマの場所として映るほど、鮮明に、残酷に渋谷を描いていたアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」。
日頃よく渋谷に行く筆者は、見慣れた場所が戦場になり、次々と破壊されていく街の様子を観て恐怖を感じた。同時に、知っている場所でキャラクターたちが戦っているからこその興奮もあった。渋谷に行ったことがない者にとっては、渋谷のイメージが塗り替えられた、衝撃的な画であったと思う。本記事では作中では渋谷をどう描いていたのかを、振り返ってみたい。
渋谷を象徴する施設を見事に再現
まず、渋谷の街の再現度の高さに驚いた。SHIBUYA 109をはじめ、渋谷マークシティや東急百貨店本店、セルリアンタワー、渋谷ヒカリエ、渋谷ストリームなど、渋谷を象徴する施設が彼らの舞台となる。
渋谷駅連絡通路での禪院真希、七海建人、禪院直毘人と陀艮との戦いは、天井が高く、それなりに広い空間を活かした戦いであった。
象徴的な「SHIBUYA MARK CITY」の文字だったり、岡本太郎の『明日の神話』を彷彿とさせる絵が飾ってあったりと、実際の連絡通路に寄せている。連絡通路の開放的な窓から見える渋谷の街並みまでが細かく再現されていた。
そして現在(2023年12月)は閉店している東急百貨店本店も、釘崎野薔薇、七海と重面の戦場となった。煌びやかなハイブランドのディスプレイが破壊され、ツヤツヤだった床はガラスの破片や血で汚れていく。お店が汚れるとか、修復不可能とか、些細なことを気にしている次元ではないことがわかる。
また虎杖悠仁、伏黒恵が粟坂二良と戦った、セルリアンタワー前の首都高速3号渋谷線は、360度ビルが立ち並び、案内標識まで再現されていた。日頃は絶対に歩けない場所だからこそ、そこで戦っていることに気持ちが高揚する。
渋谷の街に並ぶお店ひとつひとつも、再現度が高かった。伏黒と甚爾が戦った飲み屋が連なる道玄坂1丁目や、虎杖が歩いた109前の「マツモトキヨシ」〜「大盛堂書店」も、お店の並びがリアルに再現されていた。
お店ひとつだけではなく、その隣も、またその隣も実際のものと同じように描くことで、私たちが知っている「渋谷」になっていく。看板のフォントや色使いだったり、少し変色した壁だったり細かい描写が、より現実に近づけているのだろう。
現実に近づいた結果、知っている場所に虎杖たちがいると感じ、より作品に入り込める。そしてそこで戦いが起きることで、渋谷がトラウマの場所にもなり得るのだ。
駅構内の細かい描写に注目
改札やホームなど、駅構内の描写も細かい。今どこで何が行われているのかが明確にわかる描き方であった。
五条悟が封印されたのは、地下5階の駅のホーム。吹き抜けを利用して線路の上に降り立つ姿は、五条らしく華麗であった。駅の看板や電車にあしらった色はブラウンであり、副都心線を彷彿とさせる。
乗り換えの路線やトイレ、出口など、駅に欠かせない様々な案内サインも、実際のものを忠実に再現していて細かい。
キャラクターたちの背景には必ずといっていいほど案内サインが映り込み、その数の多さから、駅はこんなにも情報で溢れていたのかと改めて実感する。
脹相との戦いでは、案内サインを利用して術式について解説していたのがお洒落であった。
虎杖が脹相と戦ったトイレや真人と戦ったエレベーターも、実際に渋谷駅構内にあるものをモデルにしている。もちろんどちらも絶対に真似できないが、戦いではその使い方に驚かされた。
そして個人的に心に残っているのは、七海の最後の場面。田園都市線や半蔵門線の改札前であり、乗車しようとするたびに必ず通る。改札以外にも、切符売り場、地上や他の路線に向かう階段や通路がある。駅構内の中でも開けた場所であり、情報量が多い場所であった。
七海が亡くなる最後の瞬間まで、背景は改札前のまま変わらない。そのせいで、改札の前を通るたびにあのワンシーンを思い出すようになってしまった。筆者同様、トラウマを植え付けられた人は多いのではないだろうか。