『ブギウギ』にはなぜ“困った人”が多い? 富田望生演じる小夜に同情させない脚本の意図

 戦時下でのスズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の恋に注目が集まるNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。2人の関係になぜか反対の意を唱えていたのが、本来はスズ子の味方であってもいいはずの付き人・小夜(富田望生)である。

 一度はスズ子の逆鱗に触れて事実上の破門となるも、諦めることなく楽団の事務所にまで追いかけてきた小夜。調子に乗りやすく、遠慮というものを知らない彼女の言動は視聴者からの賛否を呼びやすい。是か非か、朝ドラ恒例になりつつある反省会タグもSNSに頻出しているのを見ると、小夜のようなキャラクターを登場させ続けるのは作品にとってプラスかマイナスかでいえば後者なのは明らか。途中ですっぱり退場させる、あるいは最初から視聴者が不快に思うようなキャラクターは描かないこともできる。または、小夜の不幸な生い立ちを強調して同情を買うこともできるだろう。だが、あえてそうしないところに本作の肝があるような気もするのだ。

 この作品には今に始まったことではなく、序盤から引っかかりを覚えるキャラクターが多数登場している。例えば、元々はスズ子の両親が営んでいた銭湯「はな湯」の常連客であるアホのおっちゃん(岡部たかし)や従業員のゴンベエ(宇野祥平)。道頓堀に飛び込んだところを梅吉(柳葉敏郎)に助けられたゴンベエは記憶喪失で行き場がない上、懸命に働いているのでまだいいが、問題はアホのおっちゃんだ。彼は、スズ子と六郎(黒崎煌代)がまだ幼かった頃に「本当の姉弟ではない」と冗談を吹き込み、何年もタダ風呂に入らせてくれている梅吉とツヤ(水川あさみ)に冷や汗をかかせたことがある。事情を知らないとはいえ、恩を仇で返すような行為だし、そもそも繊細な子供を軽口で不安にさせること自体どうかと思わなくもない。

 でもよく考えてみれば、彼らのように“ちょっと困った人”というのは私たちの身近にも結構いる。昼間から呑んだくれて周りの人に迷惑をかけるお父さん、子どもをからかって遊ぶ親戚のおじさん、噂話が大好きな近所のおばさん、口数が極端に少ないミステリアスなお兄さん、生意気でませたガキンチョ、などなど。そういう周りから怪訝な顔をされやすい人たちを「なんや、けったいなやっちゃなあ。よし、いっちょ助けたろ!」とお節介心で仲間に引き入れ、ダメなところも本人が嫌がっていないことを前提でいじって笑いに変え、みんなでかいがいしく世話を焼いてきたのが「はな湯」であり、スズ子の生まれ育った「大阪の下町」なのではないだろうか。そして、その世界は、ゴンベエが自分を助けてくれた梅吉の大切な場所を守り続けているように、義理と人情で成り立っている。アホのおっちゃんが探してきた季節外れの桃はツヤの病気を治せはしなかったが、大事なのはそこにある感謝の気持ちなのだ。

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