『ファミリー・スイッチ』から学ぶ“クリスマス精神” 愛する人のために何ができるのか?

 年末のホリデーシーズンにクリスマスを題材とした作品が配信されることが恒例となっているNetflix。毎年いくつも製作されるので、関連作品はどんどん豊富になっている。2023年も『サイコーで、最高のクリスマス』、『ジャスト・ア・メリークリスマス』、『バッドガイズ:めっちゃバッドなクリスマス!?』などの作品が用意された。そのなかでも目玉の一つとなっているのが、マックG監督によるファミリー向け映画『ファミリー・スイッチ』だ。

 「ファミリー・スイッチ」とは、家族同士の人格がスイッチ(入れ替わり)をするという意味。つまり『君の名は。』(2016年)でいうところの「私たち、入れ替わってるー!?」というシチュエーションの、家族版である。舞台となるのは、クリスマスのロサンゼルス。父母、10代の姉弟、赤ん坊と犬で構成される、5人と1匹のウォーカー家の全員の身体が、惑星直列という壮大な宇宙パワーの影響で互いに入れ替わり、愉快な騒動を引き起こすというコメディ風のストーリーだ。

 たわいのない内容といえばそうなのだが、このような型にはまっている典型的なクリスマス映画こそ、アメリカと文化の違う日本人が学びを得る機会になり得るともいえる。ここでは、そんな本作『ファミリー・スイッチ』を通して、「クリスマス精神」とは何なのかを考えていきたい。

 ウォーカー家の母ジェスを演じるのは、ジェニファー・ガーナー。最近は2024年公開予定の『デッドプール』第3作で、およそ20年ぶりにマーベル・コミック原作の女性ヒーロー、エレクトラ役を演じることで話題を集めている。本作のジェス役は、明るい性格で一家のムードメーカーであると同時に、ダンス好きのバリバリなキャリアウーマンでもある。父ビルを演じるエド・ヘルムズは、『ハングオーバー!』シリーズで有名なコメディ俳優。さまざまな楽器の演奏を得意とし、音楽教師である本作のビル役にピッタリだ。

 長女のCCを演じるエマ・マイヤーズは『アダムス・ファミリー』のドラマシリーズ『ウェンズデー』で、主人公ウェンズデーのルームメイト役を演じて好評を博し、いま大きな注目を浴びている。そしてブレイディ・ヌーンは子役からドラマ、映画で活躍し、子供向け専門チャンネル「ニコロデオン」による「キッズ・チョイス・アワード」2023年の「お気に入りの男性テレビスター」にノミネートされ、『ミュータント・タートルズ: ミュータント・パニック!』にも声優として参加している。

 これらの役柄が入れ替わり、世代感ギャップや、加齢による身体の能力の違いに戸惑う様子などのネタで笑わせてくれるのが、本作の主な内容となる。最もキツいのは、子どもたちが親の姿で愛のキスを交わさなければならないシチュエーション。また、赤ちゃんと飼い犬も入れ替わることで、赤ちゃんが犬用の水飲器に顔を突っ込むという、悪夢的状況も展開するのだ。また、マックG監督得意のダンスシーンもふんだんに用意されている。

 さらにキャストとしては、『ウエスト・サイド物語』(1961年)と、60年越しの『ウエスト・サイド・ストーリー』(2022年)にどちらも出演するという快挙を達成し、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)でも存在感を発揮したリタ・モレノが、ミステリアスな占い師の役柄として登場する。この占い師が劇中で暗示したり、恒例の一家のクリスマス行事撮影がうまくいかないことが示しているように、主人公たちウォーカー家は、以前のような仲良し家族ではなくなってしまっているという状況から、物語がスタートする。

 子どもも成長してきたんだし、家族がベタベタし合わないのは当然ではないか……という声もありそうだが、これはあくまでクリスマス映画なのである。日本ではクリスマスは恋人たちの行事だと思われているところもあるが、アメリカ及びヨーロッパ諸国のキリスト教の家庭では、基本的にクリスマスは家族が集まる日とされている。だからこそ本作のような家族を題材にした作品が多く作られ、家族を意識するシチュエーションが生まれるのだ。

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