『ブギウギ』笠置シヅ子の心情が詰まった幻の「大空の弟」 スズ子の心境とも重なる楽曲に
弟である八郎さんに関しての資料もわずかしか残っていないが、笠置さんは自伝で「弟は私のいうことなら何でもよく聞いてくれました。ほんとに可愛い弟でした」とその思いを綴っている。昭和13年1月8日に四国丸亀の師団に行ってからも、八郎さんが帰ってきた時のために商売の元手になるようにと松竹楽劇部(現:OSK日本歌劇団)から受け取った退職金を預金していたそう。しかし、その願いも虚しく出征から3年後の昭和16年に八郎さんはフランス領インドシナ(ベトナム付近)の空で命を落とした。
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「大空の弟」の楽譜発見を報じた2019年11月の朝日新聞デジタルの記事(※)では歌詞の一部が発表されており、服部さんの言葉で最愛の弟を亡くした笠置さんの心情が書かれている。一方で、最後は〈声を限りに歌うとき まぶたに浮かぶ弟よ わたしもニッポン女性なり つとめ変われど 国のため 歌に血潮をたぎらせて 果たす御国(みくに)の民の道 果たす御国の民の道〉と結ばれていたそう。
敵性音楽としてジャズが禁止される中、音楽を続けるためにはそうした愛国精神が滲む軍歌を作らなければならない状況だったのだろう。六郎の戦死を受け止めきれないまま、開戦に沸く民衆と共に万歳三唱をしたスズ子の複雑な心境ともどこか重なる楽曲に思えた。
そんなスズ子は羽鳥から誘われたりつ子(菊地凛子)との合同コンサートで「大空の弟」を披露することになる。前述した舞台では、演出の白井晃と脚本のマキノノゾミが同曲にアレンジを加え、笠置シヅ子役を演じた神野美伽が歌ったが、多くの人はまだ聴いたことのない幻の曲。本作ではどんな楽曲に仕上がっているのか。また、スズ子を演じる趣里がどのようにそれを歌い上げるのか。終戦から78年。世界各地で戦争が起きている今だからこそ、心してスズ子が歌う「大空の弟」に耳を傾けたい。
参照
※ https://www.asahi.com/articles/ASMC835D3MC8PTFC009.html
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK