朝ドラ『ブギウギ』趣里の絶望の表情が胸に迫る 虚しく響くスズ子の「万歳ー!」
思うように歌うことができず泣き崩れるスズ子に寄り添う小夜は「今は無理しなくていいから、俺が側にいるがら」と力強く抱きしめる。唯一の頼れる存在である梅吉が精神的に参っている中、スズ子にとって唯一といっていいほど弱みを見せられるのが小夜だった。予期せず共に生活することになった小夜だったが、彼女の存在がどれほど心強かったか。もちろん、スズ子を気にかけているのは小夜だけではなかった。自分だけ温かい布団で眠っていることに申し訳なさを感じていたスズ子に、チズは「弟さんだって安心しているはずさ」と優しく語りかける。こうして見ると改めてスズ子は周りに恵まれているのだと感じる。
六郎の死を乗り越えようとしていた矢先、国内では戦争の影が忍び寄っていた。1941年(昭和16年)12月8日未明、日本は米英と戦闘状態に入ったのだ。歴史の教科書でもターニングポイントとして記されている真珠湾攻撃である。開戦前の日本には閉塞感が漂っており、国民は徐々に不満を募らせていた。そのような状況の中での開戦は国民にとって流れを変える起爆剤として期待が寄せられていたのだ。「万歳ー! 万歳ー!」と熱狂する国民。その熱狂の渦に絡め取られるようにスズ子も声を上げる。だが、その心は戦争への希望などではきっとないだろう。そうせざるを得ない空気感、そして六郎の死を無駄にしないためのスズ子なりの感情表現だったように思うのだ。日本が大きく揺れ動く中、スズ子は大好きな歌を歌い続けることができるのか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK