『ゴジラ-1.0』北米大ヒット&大絶賛の理由とは 日本実写映画の歴代最高記録を樹立

 日本製『ゴジラ』映画が、ついにハリウッドで咆哮した。東宝製作『ゴジラ-1.0』が、12月1日に北米公開を迎え、週末ランキングの第3位に輝いたのだ。オープニング興行収入は1103万ドルで、日本の実写映画として歴代最高記録を樹立。外国語の実写映画としても、チャン・イーモウ監督『HERO』(2002年)の1780万ドルに続き歴代第2位となった。

 『ゴジラ-1.0』は、日本が誇る怪獣映画『ゴジラ』シリーズの第37作で、国産作品としては記念すべき30作目。「生誕70周年記念作品」とも冠された本作では、太平洋戦争の敗戦から復興に向かう東京にゴジラが襲来。元特攻兵の敷島浩一(神木隆之介)たちがその脅威に立ち向かう。監督・脚本・VFXは『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『アルキメデスの大戦』(2019年)の山崎貴が務めた。

『ゴジラ-1.0』©2023 TOHO CO.,LTD.

 本作の北米公開にあたり、東宝は子会社のToho Internationalによる自社配給を実施。興行規模こそ2308館と、ハリウッドの大作に比べれば小さめだが、事前の予想を上回るロケットスタートとなった。北米メディアは「驚くべき成績」と報じ、現地の専門家も「外国語映画としては異例の数字」と驚愕したのである。前作『シン・ゴジラ』(2016年)の北米累計興収は191万ドルだったため、すでにその約5.7倍もの成果を上げている。

 しかも本作の特筆すべきポイントは、批評家・観客の評価がきわめて高いことだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア97%、観客スコア98%を獲得したほか、観客の出口調査に基づくCinemaScoreでも「A」評価。『ゴジラ』シリーズ史上最高といえる成績である。

 しかし、なぜ『ゴジラ-1.0』はアメリカでこれほどの人気と支持を得ることができたのか?

『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』画像・映像提供:Apple TV+

 大きな要因のひとつは、東宝&ワーナー・ブラザース&レジェンダリー・ピクチャーズが展開してきた「モンスター・ヴァース」、すなわちハリウッド版『ゴジラ』シリーズの存在だ。2014年『GODZILLA ゴジラ』を経て、2019年には『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、2021年には『ゴジラvsコング』が公開されたほか、本作の公開直前にあたる11月17日からは、ドラマ『モナーク:レガシー・オブ・ザ・モンスターズ』の配信がApple TV+にてスタートしている。

 もちろん、『ゴジラ』シリーズは1950年代から断続的に海外展開されており、過去にはいくつかの作品で国外版も製作されている。しかし、東宝版『ゴジラ』シリーズ自体、2004年製作『ゴジラ FINAL WARS』をもって一時中断されており、前作『シン・ゴジラ』は12年ぶりの新作だった。また、ハリウッド版もローランド・エメリッヒ監督の『GODZILLA』(1998年)はあったが、「モンスター・ヴァース」の始動までには16年の空白がある。決して、現在のハリウッドで高いブランド力を誇るフランチャイズとは言えなかったのだ。

 そんな状況下で、怪獣王・ゴジラの存在をアメリカの幅広い世代に伝えてきたのが、「モンスター・ヴァース」およびハリウッド版『ゴジラ』シリーズだった。2014年以降、コンスタントに新作を発表し、新たなファンを着実に獲得する中、いわば『ゴジラ-1.0』は満を持しての“日本版上陸”となったのである。その注目度の高さは明らかで、7月に公開された予告編第1弾(日本版+英語字幕)は350万回以上再生された。また、9月の北米版予告編もYouTubeや各SNSで通算1500万回以上再生されている。

『ゴジラ-1.0』©2023 TOHO CO.,LTD.

 すなわち本作の大ヒットは、東宝がワーナー&レジェンダリーとタッグを組み、10年以上かけて積み上げてきた戦略によるもの。観客の63%が18歳~34歳という若年層だったことは、『シン・ゴジラ』当時からも状況が大きく変わったこと、ゴジラというアイコンが新しいかたちで受け入れられていることの証左だろう。

 また、アメリカでの高評価ぶりも納得できる。監督の山崎貴は『スター・ウォーズ』やスティーブン・スピルバーグ作品を敬愛するフィルムメイカーで、本作でもハリウッド映画への愛情とリスペクトを惜しみなく投入。終戦直後という時代設定や、戦争を生き延びた元特攻兵(すなわち“帰還兵”である)のトラウマや葛藤も、北米の観客には現代的かつ切実なテーマとして伝わった。日本で賛否を分けた(筆者自身も手放しには肯定できない)時代背景や価値観の描き方、台詞の問題も、北米では物理的な距離感や字幕ゆえに問題とはならなかったとみられる。

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