『下剋上球児』鈴木亮平演じる南雲が非情な決断を下す 問われる“下剋上”の真価

 日本一の下剋上に向けて快進撃を続ける越山高校野球部。経験の少ない部員たちは勝利に酔いしれるが、そこには落とし穴があった。『下剋上球児』(TBS系)第8話では、天王山を前にして南雲(鈴木亮平)が決断を下す。

 香良洲高校との準々決勝で、勢いに乗る越山は初回から出塁し試合を優位に進める。けれども、あと1本が出ない。チャンスをものにできずゼロ行進が続く越山の唯一の安心材料は、先発の犬塚翔(中沢元紀)が好調を維持していることだった。ようやく8回に1点を取る野球で先制すると、そのまま逃げ切った。

 軽いプレーが目立ったザン高は慢心が油断を生み、準々決勝は薄氷の勝利となった。兜の緒を締め直して臨む準決勝の相手は星葉高校。賀門(松平健)率いる星葉は甲子園出場の常連で、越山から見て格上の相手だ。準々決勝で星葉が偵察に来ていることを察知した南雲は、星葉戦で根室(兵頭功海)を先発させることを決める。

 南雲の決断はあくまで勝ちにこだわり、考え抜いた上での判断だった。賀門はあらゆる角度から越山を研究し、丸裸にしてくるだろう。地区予選の全試合で先発した翔は分析し尽くされており、星葉の強力打線は失投を見逃さず、弱点を的確に突いてくるはずだ。いかに塁に出さないか、最少失点に抑えるかが試合の帰趨を決定づける。幸い、越山にはフォーム改造で球速が増した根室がいる。データの少ない根室を先発させ、星葉の勢いを封じようと考えた。

 翔にとって星葉は受験で落ちた高校で元チームメイトがいる因縁の相手だ。試合で星葉に勝つことは、リベンジを果たす意味があった。南雲はそのことも承知した上で、あえて翔を温存することにした。翔だけではない。不動の4番・楡(生田俊平)を3番に上げ、2年の中世古(柳谷参助)を4番に、キャプテンの椿谷(伊藤あさひ)はベンチに回った。

 南雲がしたことは一見すると非情な仕打ちに見える。勝ちに徹する姿勢は、南雲が球児だった頃の賀門のやり方にも通じる。南雲は心を鬼にして生徒と距離を置いたが、それは生徒を信頼しているからでもあった。翔や楡、椿谷も悔しさはあったが、目前の一勝を掴むため一丸となって挑むことを決意した。それができたのは南雲への信頼があったからだ。

関連記事