田中敦子、『攻殻機動隊』の歩みを振り返る 「いつでも皆さんのそばにいます」

 映画『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』の初日舞台挨拶が新宿ピカデリーにて11月23日に開催され、声優を務めた田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、潘めぐみが登壇した。

 『攻殻機動隊』シリーズは、1989年に士郎正宗が『ヤングマガジン増刊 海賊版』(講談社)にて原作コミックを発表して以来、押井守監督による『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』をはじめ、さまざまなシリーズが制作されてきた。その最新作となる『攻殻機動隊SAC_2045』は、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズを手がけた神山健治と、『APPLESEED』シリーズを手がけた荒牧伸志によるダブル監督体制。これまでの『攻殻機動隊』のアニメーションを制作してきたProduction I.Gと、SOLA DIGITAL ARTSの共同制作によるアニメーションシリーズだ。シーズン1は2020年4月より、シーズン2は2022年5月よりNetflixにて世界独占配信され、さらにシーズン1に新たなシーンを加えて再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』が2021年11月に公開されている。

 『攻殻機動隊 SAC_2045』シリーズを振り返り、田中は「シーズン1の配信開始された時期はコロナが始まった時期で、そこから3年半も経ったのかと。長いようなあっという間のような気がしています。このように2本目の映画にたどり着けて幸せです」としみじみ。大塚も「あれから3年半も過ぎたのかと……。どんどん過ぎていかない? 時間!! でもよく完結したな、という感じです」と時の流れの早さに驚いた。

 山寺は「今はあたりまえに使われているサスティナブルという言葉だったり、攻殻でいろいろな未来を知っていた感じがして。それに現実が追いついていくように思って。そして今も戦争はあるわけだから、現実社会とリンクしている部分もあるなと思う」と、作品の先見性に改めて注目。潘は「3年半というあっという間のような、長い時間を一緒に過ごしたような、時間の流れを旅した感覚です。完結するのは寂しいけれど、皆さんにお届けできたことに嬉しい気持ちでいっぱいです」と公開初日を喜んだ。

 劇場版では、エピローグパートのバトーとトグサの車内の新シーンをはじめ、シマムラタカシとプリンと草薙、そして草薙とバトーのラストシーンのセリフなどが、シリーズから新たに追加された。新規カットについて、田中は「劇場版では違った結末を皆さんにお伝えするということで、神山健治監督と藤井道人監督が長時間にわたるディスカッションを重ねられたそうです。私たちがそれを伺ったうえで、新規収録に臨めたのは意義のあることで、気持ちを新たに収録することができました」と納得の表情だった。

 『S.A.C.』シリーズでも描かれていなかった新人時代と思われる回想シーンも含めて、本作でのトグサの活躍について山寺は、「トグサの物語のように始まったのは嬉しかったけど、シリーズの最初が、トグサが離婚したところから始まるので、『これは皮肉か!? 監督どういう意味だ!?』と思いました(笑)。しかも、ちょっとヨリが戻ってる感じじゃないですか……。私は、戻ったわけじゃなく新たな幸せを掴みまして!」と、祝福の拍手をもらうも、「でも今の幸せが“見せられている”虚構だったらどうしよう……」と、自虐エピソードで爆笑を取っていた。

 また、キャストそれぞれから演じたキャラクターへの熱い思いも語られた。江崎プリンについて潘は、「シリーズを通して『攻殻機動隊』はノスタルジーを大事に描いているので、プリンからも郷愁を感じました。郷愁と書いてプリンと読むんです!」と熱弁。山寺はトグサについて「今まで自分に近いキャラは『アンパンマン』の“カバお”だと言ってきたけど、やはりトグサだと思う。一番自然にやっている役かも知れない。無理なく演じられる存在であり、とても大切なキャラクターです」と、ユーモアを織り交ぜながらも思い入れを口にした。

 バトーについて大塚は、「付き合いが長いので他人とは思えないですね。『攻殻機動隊』の世界はフィクションなわけだけど、バトーは本当にいて、シンパシーを感じる(相手の)ような」としみじみ。そして、本作の主人公でもある草薙素子について田中は、「1995年の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の時のオーディションで素子は私を選んでくれて、そこから足掛け28年。最初は手の届かない孤高の存在だったものが、回を重ねるごとにお互いに寄りかかれるようになった。今となっては相棒のような存在です。声優を続けてきた中でもかけがえのない存在で、彼女がいなかったら私は今ここにはいないかもしれないと思うくらい、大切なバディですね」と、大事な存在であるとコメント。

 11月14日は田中が、そして24日は大塚が誕生日ということで、山寺と潘から本作の劇場版グッズセットが2人にプレゼントされた。田中は「こんなにたくさんの皆さんに誕生日を祝ってもらう機会は今までなかったです。本当に幸せで感無量です」と感激。大塚は「僕なんてまだ誕生日が来てないのに祝ってもらってすみません! 皆さんから温かい拍手をくださるだけで、また明日からの生きる勇気が湧いてきます!」と感無量の様子だった。

 そして登壇者が舞台挨拶を締めくくる挨拶をする中、田中は「ここにこうして立っていられるだけで心から幸せです。『攻殻機動隊』は『最後の人間』で一旦結末を迎えるのかもしれません。でもどうか忘れないでください。皆さんがネットにアクセスする時、『攻殻機動隊』にアクセスする時、私たちは、私はいつまでも皆さんのそばにいます。どうか忘れないでください!」と、シリーズ作品である『イノセンス』の草薙素子のセリフを引用し、熱い涙を流しながら、作品を支えるファンたちに謝辞を述べ、ファンからの大きな拍手が会場に鳴り響いた。

■公開情報
『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』
3週間限定公開中
キャスト:田中敦子、中博史、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大川透、小野塚貴志、山口太郎、玉川砂記子、潘めぐみ、津田健次郎、曽世海司、喜山茂雄、林原めぐみ
モーションアクター:草薙素子、川渕かおり、荒巻大輔、曽世海司、笠原紳司、岡田地平、武井秀哲、山城屋理紗
原作:士郎正宗『攻殻機動隊』(講談社KCデラックス刊)
総監督:神山健治、荒牧伸志
監督:藤井道人
演出・編集:古川達馬
脚本:神山健治、檜垣亮、砂山蔵澄、土城温美、佐藤大、大東大介
キャラクターデザイン:Ilya Kuvshinov
CGディレクター:松本勝
3Dキャラクタースーパーバイザー:松重宏美
プロダクションデザイナー:臼井伸二、寺岡賢司、松田大介
モデリングスーパーバイザー:田崎真允
バックグラウンドモデリングスーパーバイザー:市川聡
リギング、キャラクターFXスーパーバイザー:錦織洋介
リギングスーパーバイザー:井上暢三
モーションキャプチャディレクター:宇土澤秀公
レイアウトスーパーバイザー:崔佑碩
アニメーションスーパーバイザー:山口雄也
エフェクトスーパーバイザー:清塚拓也
ライティング、コンポジットスーパーバイザー:高橋孝弥
テクニカルスーパーバイザー:大桃雅寛
音楽:戸田信子、陣内一真
サウンドデザイナー:高木創
主題歌:millennium parade「Secret Ceremony」「No Time to Cast Anchor」
音楽制作:フライングドッグ
主題歌協力:ソニー・ミュージックレーベルズ
制作:Production I.G、SOLA DIGITAL ARTS
製作:攻殻機動隊2045製作委員会
配給:バンダイナムコフィルムワークス
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
公式サイト:www.ghostintheshell-sac2045.jp
公式X(旧Twitter):@gitssac2045

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