山田裕貴&杉野遥亮、『どうする家康』に刻んだ戦国武将としての生涯 切なく穏やかな最期
秀忠への希望が描かれた一方で、第44回でもまた別れが待っていた。忠勝と康政は家康の夢を見届けることを強く望んでいたが、老いに抗うことはできなかった。
老齢を理由に、一度は隠居を申し出た忠勝だったが、家康はそれを望まない。
「平八郎。隠居など認めぬぞ」
「小平太もまだ老いるな」
「お前たちの力がいる」
2人は家康からの言葉に自分たちの役目を強く感じ入るも、康政の体は病に侵され、忠勝は目を悪くしている。「無念だが、我らはここまでのようじゃ。役目は終えたのだ」と呟く康政の声色も、「老いなど認めん」と自らを奮い立たせるように声をあげた忠勝の声色も切なく響いた。
忠勝と康政は2人で語らう。家康の前では「いつになったら主君と認められるやら」と言っていた忠勝だが、本当はとっくのとうに家康を主君と認めていた。康政に「いつからじゃ」と問われ、忠勝は言う。
「大樹寺。桶狭間のあとの」
「そなたたちのことは、このわしが守る!」と言い放ち、敵軍を気迫で圧倒した家康に、忠勝も康政も魅せられていた。忠勝と康政は、主君としての覚悟を決め、強く成長していく家康の背中をずっと見続けてきたのだ。「まだ見ていたいのう。あの背中を」「にらみを利かせてな」と2人は笑い合う。年が近く、良きライバルでもあった2人。かつて頼りない殿を支えてきた若き武将たちとの別れは、穏やかに描かれた分、寂しさが残る。
劇中、忠勝は絵師に自身を描かせていた。忠勝が何枚も何枚も描き直させたことで、その肖像画は康政から「別人だわ」とツッコミを入れられていた。その肖像画は、「時が満ちた」と豊臣の脅威に家康の背を強くにらみつけていた。忠勝も康政もその生涯を終えたが、彼らの強いまなざしは残り続けている。
■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK