『ガルパン』は新作のたびに発見しかない! 『最終章』へ引き継がれた”侮られた者の逆襲”

 では、現在上映中の『ガールズ&パンツァー 最終章』について考えていきたい。それまでの物語は主人公の西住みほが率いる大洗女子学園が、無名校であり不利な状況下に置かれながらも名門校を相手に勝ち上がっていく、王道のスポ根物語であった。そして『ガールズ&パンツァー 劇場版』では格上であった大学生選抜が相手と、圧倒的不利な状況であったにもかかわらず間一髪で勝利を収める話だった。

 ここまでの物語で西住みほと大洗女子学園は、観客も作中でも誰もが認める強豪校になった。つまりこれまでチャレンジャーであった立場から、ディフェンディングチャンピオンの立場で相手と対峙するということになる。相手も自分たちを倒すためにより深く対策をしてくる。

 そして『ガールズ&パンツァー 最終章』から見えてくるテーマが“侮られた者の逆襲”だ。第2話で戦うことになる知波単学園は、戦略が突撃一辺倒であり、それを逆手に取られて負けてしまうことも多いチームだった。しかし第2話のラストにおいて、隊長である西絹代が大洗女子学園との戦い中に撤退を選択することにより、大きな成長を見せることになる。このことは作中のキャラクターたちを戸惑わせ、大洗女子学園を追い詰める一因にもなった。

 また第3話、そして現在上映中の第4話では絶対的エースであり、誰もが認める隊長であった西住みほのあんこうチームが早々に撃墜されるという事態に陥る。物語としても主人公であり、これまで戦果を多く上げてきた中心を欠くことで、戦力が大幅ダウンすることは間違いなかった。西住みほがいない大洗は、強豪校とはいえ脆いのではないか、という思いすらよぎる。その圧倒的不利な状況に陥った中で戦うのが第4話の内容だ。

 他にも第1話では大洗女子学園の不良というレッテルを貼られていたお銀を中心としたサメさんチームであったり、1回戦の相手であるBC自由学園は仲間割れを繰り返し1回戦敗退が常になっていたりと、決して選ばれた強者ではなく何かと問題がある生徒や学校が多く登場する。しかし、その意識的ではなくとも侮っていた相手が、奮起し周囲を見返すという流れは、TVシリーズの『ガルパン』から一貫して続く流れであり、最終章にも引き継がれている。

 これらは学校の部活動を扱った作品やスポーツ作品として、試合を面白くするためのピンチを作り出すと同時に、全体を通して鑑賞すると人間ドラマとしても一貫している。西住みほも、実家の戦車道から逃げるつもりで転校してきたが、結果的に戦車道と向き合い仲間と人間的成長を獲得していく。

 もしかしたら女子高生キャラクターということもあり、単なる萌えアニメのように思われる未視聴の方もいるかもしれないが、人間ドラマとしても一級品の成長を見せてくれる作品なのだ。実弾を用いた戦車戦で誰も傷つかないなどのファンタジー的表現も一部にはあるが、だからこそ安心して迫力のある戦車戦を鑑賞し、キャラクターの成長を見守ることができる。今のペースでいくならば、次回作が出るのも2年ほどかかるだろうが、その間にファンは過去作を見返すことで新たな発見があるだろうし、未見の方は少しずつ鑑賞していくと、知らなかった新たな扉が開くのではないだろうか。

■公開情報
『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話
全国公開中
声の出演:渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香、福圓美里、高橋美佳子、植田佳奈、菊地美香、吉岡麻耶、桐村まり、中村桜、仙台エリ、森谷里美、井上優佳、大橋歩夕、竹内仁美、中里望、多田このみ、山岡ゆり、秋奈、井澤詩織、山本希望、葉山いくみ、佐倉綾音、椎名へきる、能登麻美子、下地紫野、石上美帆、若山詩音ほか
監督:水島努
脚本:吉田玲子
キャラクター原案:島田フミカネ
キャラクターデザイン・総作画監督:杉本功
考証・スーパーバイザー:鈴木貴昭
キャラクター原案協力:野上武志
ミリタリーワークス:伊藤岳史
プロップデザイン:竹上貴雄、小倉典子、牧内ももこ、鈴木勘太
3D監督:柳野啓一郎
モデリング原案:原田敬至、Arkpilot
3DCGI:STUDIOカチューシャ
色彩設計:原田幸子
美術監督:平栁悟
撮影監督:棚田耕平
編集:吉武将人
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭正
録音調整:山口貴之
音楽:浜口史郎
アニメーション制作:アクタス
製作:ガールズ&パンツァー最終章製作委員会
配給:ショウゲート
©GIRLS und PANZER Finale Projekt
公式サイト:https://girls-und-panzer-finale.jp/

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