『ONE DAY』江口洋介の陰湿さと威圧感が際立つ演技 蜜谷と「アネモネ」の関係性を考察

 記憶を失い、自分自身が誰なのかが分からないのに銃殺事件の容疑をかけられ逃亡中の誠司(二宮和也)、その銃殺事件の取材に走り、特ダネまで掴んだのに上層部の判断で放送してもらえなかった「テレビ横浜」の桔梗(中谷美紀)、深夜に誠司が逃げ込んできたことで、伝統あるデミグラスソースをこぼしてしまったが、なんとか毎年恒例のクリスマスディナーを実施しようとしているレストラン「葵亭」のシェフ・時生(大沢たかお)。『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)はそれぞれの物語が活発に動き出し、掘り下げたいことがたくさんあるが、本稿では、誠司を追っているらしい蜜谷満作(江口洋介)に注目したい。

 蜜谷は警視庁・組織犯罪対策部の管理官。横浜で起きた事件の捜査にわざわざ出向いて、カレン(松本若菜)らをはじめとした神奈川県警の面々を驚かせた。あえて誠司を追っている“らしい”としたのは、蜜谷が誠司の敵なのかがはっきりしないからだ。現場から逃げた犯人の身元を特定できていなかった神奈川県警に、その男が誠司だと教えたのは蜜谷だった。ひょんなことから誠司と出会ったフリージャーナリストの柚杏(中村アン)も、「蜜谷なら誠司のことをよく知っているかもしれない」と誠司に会いにいくことを勧めた。誠司を蜜谷が追っていたなら、彼に詳しいのは妥当だろう。

 しかし、いざ蜜谷に会いに行った誠司は、自分が埠頭で目覚めた時、携帯から「逃げろ!」と叫んだのが蜜谷だったということに気がついた。誠司はとっさにその声にしたがって、今、逃亡犯となっているのだ。驚異的な記憶力を持つ誠司が勘違いをする可能性は低い。これではまるで蜜谷が誠司の手助けをしているようではないか。しかも、誠司を慕っている国際犯罪組織「アネモネ」の2代目ボス・ミズキ(中川大志)は、誠司が蜜谷と会ったことを知ると、わずかに動揺を見せ、どんなことを話したかなど詳細を知りたがった。ミズキははじめ、誠司に電話口で「逃げろ」と言ったのは自分だと嘘をついている。どうしてそんなことをする必要があったのか。何か蜜谷と「アネモネ」の間に、「追うー追われる」以外の関係性があるような気がしてしまう。

 また、蜜谷は神奈川県警にやっては来たが、捜査の陣頭指揮をとるわけでもなく、単独で動いている。カレンは「蜜谷が何かを隠しているのでは?」と尾行を試みるが、そこはやはり相手が何枚も上手。途中で気づかれてしまい、同時に誠司が目撃されたとの情報も入ってうやむやになってしまった。

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