『ゴジラ-1.0』30年の歴史を背負った大咆哮が轟く 人類が紡ぐドラマに“ゴジ泣き”必至

 得体の知れないその大怪獣の存在は、もはや災害である。いつ、どこに、なぜ出現するのか。それは誰にもわからない。地震や津波、そして戦争のような人間が一人では決して立ち向かうことのできない大きな恐怖のシンボルーーそれがゴジラなのである。

 ゴジラ生誕70周年となる2024年に先駆けて製作された、実写版第30作品目となるゴジラ映画『ゴジラ-1.0』。戦争から生き残った敷島浩一(神木隆之介)は、「特攻」から逃げたことに負い目を感じながら、日々を力なく生きていた。戦争によってすべてを失った日本は焦土と化し、「無」の状態に。かつては家だったはずの瓦礫の山に愕然とした敷島は、自らの両親も戦争で死んだことを知る。

 この部分だけを見ると、ごく普通の戦争映画のようにも思えるかもしれないが、それはまったくの誤解だ。『ゴジラ-1.0』は、すでに怪獣映画として幕を開けている。実は、敷島が機体の不具合を装って特攻から逃れ、不時着した島には多くの整備員がいた。しかし、敷島を除いてゴジラの被害から生き残った者は、その中のたった一人の整備員のみ。つまり敷島は戦争だけでなく、ゴジラからも生き延びていたのだ。

 この“令和のゴジラ”の恐ろしさが、これまた凄まじい。

 『ゴジラ-1.0』は、日本の映画で初めてIMAX、MX4D、4DX、ScreenX、4DXScreen、Dolby Cinemaという6つの大型フォーマットで上映され、ゴジラが引き起こす恐怖を体感できる環境が用意されている。さらに、この「恐怖」の演出は、音と映像の両面から制作陣の徹底したこだわりが感じられる場面でもある。

『ゴジラ-1.0』監督×音響がDolby Cinemaの魅力を語る 鳴き声は“聴く”ではなく“浴びる”

11月3日に公開されるTOHOスタジオ・ROBOT制作による映画『ゴジラ-1.0』の公開に先駆けて、有楽町 micro FOOD…

 本作は、巨大なゴジラを間近で捉えたカメラワークが印象的だが、いかなるアングルから捉えても、生物らしいリアリティが損なわれることはない。監督によると、その理由は数億ポリゴンのデータ量を持つオリジナルを作成しているからだそうだ。皮膚の質感や鱗の輝きまで感じさせるゴジラは、本当に生息しているかのようなディテールが恐怖をより一層際立たせている。

 さらに、映像だけでなく「音」にもこだわりが見られる。今回の制作では、1954年の初代ゴジラの鳴き声を使用する方針が取られており、約10人の録音部隊が録音機とマイクを手にZOZOマリンスタジアムで初代ゴジラの声を録音した。また、足音についてはイチから制作されているが、こちらも初代のオリジナルの記号ともいえる「恐怖のイメージ」を壊さないように慎重に調整されている。このように最新の技術を駆使しながらも、第30作目としてオリジナルのゴジラの歴史を感じられる点も、本作の魅力だろう。

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