『イ・ドゥナ!』“小悪魔”スジに翻弄されるヤン・セジョン 最終話で示唆された未来とは?

ハヨンが演じる聡明な女子大生

 主人公のドゥナと同じくらい本作で輝いていたのは、ハヨンが演じるキム・ジンジュだ。ハヨンといえば、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で、ウェディングドレスが脱げてしまった花嫁役を演じたことが記憶に新しいが、今回はショートヘアにして全く違うイメージで登場した。

 役どころとしては、高校時代にウォンジュンと共に成績のトップ争いをした間柄で、ライバルというよりはお互い「ソウルメイト」と言い合う仲だった。ウォンジュンはジンジュのことを異性として意識しており、ある雪が降る日に思い切って告白するが、ジンジュはそれをきっかけにウォンジュンを避けるようになり、2人の関係は自然消滅していく。しかし1年後、ジンジュは1年遅れでウォンジュンと同じ大学に進学して再会を果たす。

 ジンジュは純粋にウォンジュンとの再会を喜ぶが、ウォンジュンはジンジュにフラれたと思っていたのでなんともいえない複雑な表情を見せる。筆者は最初、ジンジュのウォンジュンに対する態度が無神経ではないかと思ったのだが、物語が進むにつれ大きな誤解だと分かる。

 ジンジュは両親・姉と裕福な家庭に育っていたが、モラハラ気質の父親に悩んでいた。少しでも帰宅が遅くなると電話をしてきて「このクソガキ! どこで遊び歩いているんだ!」と怒鳴り散らされる。

 ウォンジュンに告白された日、両想いだと分かり天にも昇る気持ちで帰宅したら、恋人と会っていたことが父親にバレた姉が、罰として髪の毛を切られるという虐待を受けていた。それを目にしたジンジュは一気に現実に引き戻され、ウォンジュンと付き合うことができないと彼を避けるようになったのだ。

 ジンジュは、勉強もできて明るい人柄で人気者の要素をすべて持っている女性だが、一方でこうした暗い側面もあり、ハヨンは複雑なジンジュの人物像を見事に演じ分けていた。

 そしてドゥナとウォンジュンの間を邪魔する存在になるかと思いきや、全くそんなところはない。だからといって良い人を貫くのではなく「ウォンジュンがドゥナさんにフラれたらいいのに」と素直な気持ちを言ってしまう人間臭さも持ち合わせている。

 大学生になり、父親から離れるために家を出たジンジュは、再びウォンジュンとやり直したいと考えていた。なぜならウォンジュンのことを先に好きになったのはジンジュだからだ。

 ウォンジュンに「数学を教えてくれる姿で好きになった」と言うジンジュ。その言葉に「分かる! 分かる!」と共感する視聴者も多いだろう。数学が苦手な文系女子のあるあるで、筆者も遠い昔、学生時代に感じた甘酸っぱい思い出に浸ってしまった。

 ウォンジュンにふさわしいのはジンジュなのではないかと思うものの、ウォンジュンと結ばれなかったからこそ、ジンジュは本当の意味で自由になったような気がする。いずれにしてもこんなに魅力的な女性に好かれるウォンジュンの男性としての度量の大きさを感じずにはいられなかった。

2人の未来を示唆するラストシーン

 本作は、ドリームスイートのライブシーンで躍動感のある映像を観たと思えば、ドゥナとウォンジュンの心の動きが静かに描かれるなど、「静と動」が際立つ作品になっている。『愛の不時着』で一世を風靡したイ・ジョンヒョが監督を務めているだけあって、映像と音楽の美しさで、ドゥナとウォンジュンの心情を事細かに表現。そして現代が舞台になっているにも関わらず、80年代のようにどこか懐かしい雰囲気が漂うのも特徴的だ。

 物語の展開は意外に早く、ドゥナとウォンジュンたちに起きる出来事を淡々とスピーディーに描いていく。だからといって雑な印象は全くなく、登場人物たちの心情がしっかりと伝わる演出はさすがだ。

 最終的にウォンジュンは、復帰して再びスターとなったドゥナとの別れを決意する。しかし、ドゥナと何度も距離を置こうとしたものの、結局離れられなかったウォンジュン。それを象徴するかのように、大学を卒業して念願の公務員になったウォンジュンが日本に出張中、ドゥナとニアミスするところで、物語は終わる。

 若かった2人が大人になってどこかで再会し、愛を育むのではないかと思わせるラストシーン。ドゥナとウォンジュンは決して悲しい恋愛をしたのではないと信じたい気持ちでいっぱいになった。

■配信情報
『イ・ドゥナ!』
Netflixにて独占配信中
出演:スジ、ヤン・セジョン、ハヨン
原作・制作:イ・ジョンヒョ、チャン・ユハ

関連記事