『どうする家康』松本潤×音尾琢真の対話に刻まれた“時間” 大谷吉継役・忍成修吾の好演も

 『どうする家康』(NHK総合)第41回「逆襲の三成」。豊臣秀吉(ムロツヨシ)の遺言のもと、五奉行、五大老による政を推し進めた石田三成(中村七之助)は失脚し、佐和山城に隠居していた。一方、徳川家康(松本潤)は大阪城・西ノ丸に入り、内府として天下の政を行っている。家康を快く思わぬ者たちによる謀が明るみに出ると、家康は処断を下すが、政情は予断を許さない。ある時、会津の上杉景勝(津田寛治)に謀反のうわさが広がる。茶々(北川景子)は天下泰平のため、成敗に向かうべきと家康を諭す。家康は大阪を離れることに一抹の不安を感じ、留守を鳥居元忠(音尾琢真)に預けることにした。

 家康と元忠は杯を交わす。元忠は、家康が人質として過ごしてきた時から仕えてきた忠臣だ。家康が“か弱きプリンス”だった頃、平岩親吉(岡部大)とともに家康を支える元忠の姿が印象に残っている。幼少より家康に付き添っていたからか、元忠や親吉からは家臣であると同時に、幼なじみや友達のような間柄にも見える。その親しげな雰囲気もあってか、元忠と言葉を交わす家康はどこかリラックスして見えた。

 家康は元忠に、京都・伏見城を任せたいと伝える。「上方を留守にすれば、兵を挙げる者がおるかもしれん」と聞かされ、元忠はすかさず「石田治部殿が……?」と返す。家康は、三成が損得ではなく己の信念によって生きていること、そのような信念が人の心を動かすのだと説いた。そして家康は、万が一の折に要となる伏見を守り抜くことを、最も信用できる家臣である元忠に命じた。万が一を考慮する家康に、元忠はふだん通りの明るさで「殿を困らせるやつは、このわしがみんなねじ伏せてやります」と意気込んだ。

「わしは平八郎や直政のように腕が立つわけでもねえし、小平太や正信のように知恵が働くわけでもねえ」
「だが、殿への忠義の心は誰にも負けん」

 元忠のまなざしは凛々しく、その忠義心には説得力がある。その後、感極まった元忠は、「殿にお仕えして50年……。あの泣き虫の殿が……よくぞ、ここまで……」とすすり泣く。徳川家臣団の中でも、ひときわ感情表現豊かな元忠らしい場面だ。

 ボロボロ涙を流す元忠は「わあ……めそめそするとまた千代にひっぱたかれる」と笑い、家康も顔をほころばせる。逃げることの許されない重い責務を前にしても、これまでと同じく、“殿”と“彦”として言葉を交わす2人の姿には胸を打つものがある。

「殿。宿願を遂げる時でございますぞ」
「戦なき世を成し遂げてくださいませ」

 大戦となる未来を覚悟してのことだろう。固く約束する家康と元忠の目には涙が浮かんでいた。

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