朝ドラ『ブギウギ』“完璧”な橘アオイ役と重なる OSK日本歌劇団現役スター翼和希の歩み

 朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)のヒロイン・鈴子(澤井梨丘)が歌の世界への第一歩を踏み出すきっかけとなった“体中にサブイボが立つ”舞台体験を与えてくれたのが、梅丸少女歌劇団(USK)のトップスター2人の共演だった。

 娘役トップスターの大和礼子(蒼井優)と男役トップスターの橘アオイ(翼和希)が蝶をモチーフにした衣装を身に纏い、美声と優雅なダンスを披露するステージは、煌びやかな別世界のようで、ついさっきまで花咲音楽学校受験の不合格の知らせに打ちひしがれていた鈴子の気持ちを一気に前向きに変えてしまうほどのエネルギーを秘めていた。

 橘を演じる翼は本作が朝ドラのみならずTVドラマ初出演。本作のヒロインのモデルである笠置シヅ子がかつて在籍していたOSK日本歌劇団の現役男役スターだ。言わずもがな本作のUSKはOSKがモデルと思われる。翼自身も宝塚音楽学校を受験し不合格になった後にOSKの存在を知って研究所に入所しており、鈴子の歩みとも重なるところがある。

 短髪で凛々しくスッと上に伸びるような立ち姿が印象的な橘が稽古場に入ってくるなり、一瞬にして教室に緊張が走る。劇団の規律を体現しているかのような橘の一寸の隙もない厳格な佇まいは、新人の教育係としても説得力がありすぎる。新人にも非常に厳しく細かなところまで指導をするが、それはUSK第一期生の彼女自身が新人時代に“最も欲しかった存在”なのではないだろうか。近くに見本になり指導してくれるような先輩もいない環境下で自らを厳しく律し、鍛錬を重ねるしかなかった彼女から感じるのは、嫌われ役を買ってでも差し出したい新人への愛情。そしてもちろんお客様やステージへのリスペクトのように思える。

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