『呪術廻戦』「渋谷事変」七海建人、虎杖悠仁らにとって“五条悟”とは 奪還がいま始まる

「アナタにとって五条悟とは?」

 そんな質問から始まった、『呪術廻戦』第33話「渋谷事変 開門」。「先生!」といち早く答える虎杖悠仁、「恩人です」と答える伏黒恵、「よく知らない」と答える釘崎野薔薇、「バカ」と口を揃える2年組、そして七海建人は「軽薄、個人主義」と語った。それぞれの想いがあって、いま獄門疆に封印された五条悟の奪還が始まる。その戦いの前に、改めて彼らにとっての“五条悟”を考えたい。

「命の恩人」ではなく「先生!」と真っ先に答えた虎杖悠仁

 虎杖は本作の主人公であり、彼の“死刑”が決定した瞬間からアニメ『呪術廻戦』の物語は始まった。その死刑を条件付きで延期させたのが、他でもない五条悟である。乙骨憂太同様、虎杖にとって彼は命の恩人だ。しかし、それよりも先に自分にとっての師である感覚が強いのも、なんだか虎杖らしい。彼は宿儺の器になる前から、圧倒的な身体能力とコミュニケーション能力を持っていて、言うなれば普通の男子高校生としては“最強”の部類だった。特に努力しなくても人並み以上に何かができてしまう分、逆に彼には目標になったり、インスパイアされたりする人が周りにいなかったのではないだろうか。

 地に足のついた大人も一緒に暮らしていた祖父以外にいなかったため、七海もまた虎杖が必要としていた存在である。ただ、“なんとかなる”と基本的にポジティブな虎杖にとって慎重派な七海や伊地知潔高とは違う魅力が、五条にはあるのではないだろうか。死んだことにして身を隠していた期間も含め、虎杖は五条と過ごすことが多かった。“自分の命を救った最強の術師”という畏怖の気持ちではなく、一人の人間としての彼を見てきたからこそ、そしてそんな彼から学びがあったからこそ「先生」と虎杖は表現したのかもしれない。

“一応”「恩人」と答えた伏黒恵

 「懐玉・玉折」を観る前と後だと、伏黒と五条のやりとりが少し違って見えてくる。何を隠そう、五条は伏黒の父親・甚爾を殺した張本人だ。甚爾の最期の言葉を受けて、幼い伏黒の元へ行った五条。その時から伏黒はしっかりしていたが、五条が殺したことまではわからなかったのではないだろうか。彼の実母は早くに他界し、父・甚爾は津美紀の母親と付き合って蒸発。幼い伏黒にとって、甚爾がいなくなったことは“いつものこと”に思えたから深い事情を五条に聞かなかった。そして五条も、甚爾の話をいつか伏黒にする約束をしている。

 こうして、五条が介入したことで本来なら禪院家に売られるはずだった伏黒と津美紀は保護され、将来呪術師として働くことを担保に高専から金銭の援助を受けて成長した。禪院家のことを考えれば、伏黒は優遇され津美紀は“人間ならざるもの”として扱われていたに違いない。そんな未来を変えてくれた五条は、やはり伏黒にとっての恩人で間違いない。

 伏黒はいつだって、「死んで勝つ」つもりでいた。はなからホームランを打とうとせずに、塁にいる他者を進めるために送りバントを狙うタイプだ。そんな彼に「死んでも勝つ」ことを説いたのは五条であり、彼の助言があって伏黒は何度も“ここぞ”という時に成長してきた。五条や禪院真希から学んできた体術や武器の使い方、そして戦闘におけるメンタルを「渋谷事変」でも発揮することになりそうだ。

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