『大奥』原作でも人気の高い平賀源内&青沼が登場 コロナ禍の医療従事者と重なる姿

 町医者の父の影響で医者も蘭学も嫌っており、当初は青沼に対して偏見を持っていた右筆助・黒木(玉置玲央)。彼の心を動かしたのも、感謝以外の見返りを求めず、大奥の中でも位の低い御目見以下の、しかも自身に対して差別感情をむき出しにしてきた家臣たちの治療に当たる青沼の姿だ。彼らが罹患したのは赤面ではなく、風熱。今でいうインフルエンザだが、当時は死に至る恐ろしい病だった。自身も感染する恐れがありながら、冷静に対処するその姿は新型コロナウイルスについてまだ不確定要素が多く存在していた時期に、最前線で治療を行なっていた医療従事者たちの姿にも重なる。そんな青沼が大奥に持ち込んだサボン(石鹸)のおかげで御目見以下の中では死者は最小限に留まるという展開も、感染対策意識が薄まっている今だからこそ、教訓として深く刻まれるものとなった。

 一方で、10代将軍・家治(高田夏帆)とその御台所・五十宮(趙珉和)にサボンの効力を認められ、「まことに悔しいことですが、人は病をことごとく防ぐ術を見つけたことはないのです」と正直に返す青沼。その台詞は青沼の謙虚さと同時に、このドラマの誠実さを裏付けた。また、シーズン2には『カムカムエヴリバディ』で初代ヒロインを支える重要な米軍将校役を演じた村雨辰剛や、『おかえりモネ』では黒木とは対照的にひょうひょうとしていて掴みどころのない記者役に扮した玉置玲央をはじめ、『ちむどんどん』(NHK総合)で演じた子供たちを静かに見守る母親から一転、物腰の柔らかさに闇が垣間見える一橋治済役の仲間由紀恵、『舞いあがれ!』(NHK総合)での名演を記憶に新しい僖助役の新名基浩など、近年の朝ドラで話題を呼んだ実力派が揃う。シーズン1と変わらず、キャストとスタッフが原作に最大の敬意を持って挑むシーズン2に引き続き期待したい。

■放送情報
ドラマ10『大奥』Season2
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:
【医療編】
鈴木杏(平賀源内)、玉置玲央(黒木)、村雨辰剛(青沼)、岡本圭人(伊兵衛)、中村蒼(徳川家斉)、蓮佛美沙子(御台・茂姫)、安達祐実(松平定信)、松下奈緒(田沼意次)、仲間由紀恵(一橋治済)
【幕末編】
古川雄大(瀧山)、愛希れいか(徳川家定)、瀧内公美(阿部正弘)、岸井ゆきの(和宮)、志田彩良(徳川家茂)、福士蒼汰(天璋院・胤篤)
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
音楽:KOHTA YAMAMOTO
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

関連記事