仲間由紀恵の一橋治済、福士蒼汰の再登場も 『大奥』Season2の見どころを原作読者が解説

 2023年1月期に放送されたNHKドラマ10『大奥』のSeason2が、10月3日より放送開始となる。3代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、“男女逆転”の江戸パラレルワールドを描いたよしながふみの傑作コミックを全編ドラマ化する本シリーズ。すでに原作を読了した筆者の視点で、ネタバレを最小限に留めながらSeason2の見どころを解説する。

 若い男にのみ感染し、致死率80%に及ぶ奇病「赤面疱瘡」の蔓延で男子の人口が女子の4分の1にまで激減した江戸時代。徳川幕府が治める国家の転覆を恐れた家光の乳母・春日局(斉藤由貴)が江戸城に築いたのが、一人の女将軍に対して数多の美男子たちが仕える大奥である。その華やかな舞台裏には、徳川家の血を絶やさぬよう、望むと望まざるとにかかわらず生殖を強いられた男女の悲哀があったこと。Season1は、大奥の最高機密文書『没日録』を通じて8代将軍・吉宗(冨永愛)がそのことを知る構成となっていた。

 原作と流れはほぼ変わりないが、一点だけ大きく改変されたのが後の吉宗の行動だ。ドラマでは、吉宗が自身の“ご内証の方”となった水野(中島裕翔)や町医者の小川笙船(片桐はいり)らとともに国を滅ぼしかねない赤面疱瘡の撲滅に挑戦。結果は敗北に終わるが、吉宗は解決の糸口を異国の薬に見出し、洋書輸入の禁を緩める。脚本家の森下佳子は史実を織り込み、さらには吉宗の意志を継いだ龍(當真あみ)、のちの田沼意次(松下奈緒)が蘭学医・青沼(村雨辰剛)らと赤面疱瘡に再度挑む「医療編」へ鮮やかにつないだ。

 特に原作ファンから熱い支持を受ける「医療編」は、長崎・出島で蘭学医を務めていた青沼が本草学者の平賀源内(鈴木杏)に誘われて大奥入りを果たすところから始まる。田沼からの内命で、赤面疱瘡の解明と大奥内での蘭学普及を目指すこととなる2人。黒木(玉置玲央)や伊兵衛(岡本圭人)など、周囲の人間に“種馬”として以外の役目を与え、少しずつ味方を得て同じ目標に向かっていく様が描かれるこのパートでは、青春群像劇の要素が全面に押し出される。赤面疱瘡に加え、未曾有の災害やそれに伴う飢饉など様々な困難が訪れる時代にあって、希望を絶やさぬ魅力的な登場人物。そして、青沼と源内を中心とした彼らの友情が見どころだ。NHKドラマの常連俳優である鈴木と、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)での好演で注目を集めた村雨が本作でどんな化学反応を見せてくれるのか楽しみである。

 一方、その裏で暗躍するのが一橋治済(仲間由紀恵)。誰が演じるのか、かねてより最も注目されていた人物だ。治済は吉宗の三女・宗尹の子で一橋家当主。これがまた曲者で、その物腰の柔らかさに冷酷な一面を隠しており、『大奥』最大の悪役にして怪物とも言われている。彼女の登場で爽やかなムードは一変。サスペンス色が強くなり、田沼たちのみならず、治済の息子である11代将軍・家斉(中村蒼)や御台所の茂姫(蓮佛美沙子)まで彼女の策略に踊らされていく。そんな治済に仲間が配役されたのは何ら不思議ではない。『美しい隣人』(カンテレ・フジテレビ系)でも、仲間はその美貌で男性たちを翻弄し、やがて破滅へと導いていく悪女を演じていた。あの時以来の怪演で再びお茶の間を震撼させてくれることだろう。

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