映画『ミステリと言う勿れ』はシリーズの集大成に 原菜乃華の“アイドル映画”の一面も

 印象派展を見るために、広島を訪れた整は、狩集汐路(原菜乃華)という少女と出会う。彼女と共に整は、狩集家の遺産相続会議に出席。遺産は当主となる者、一人のみが相続するものとなっていたが、実子はすでに亡くなっていたため、汐路を含めた四人の孫から選ばれることとなる。四人には狩集家にある四つの蔵の鍵がそれぞれに渡され遺言書にあった「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題を与えられる。整は汐路とともに、蔵のことを調べるが、次々とトラブルに巻き込まれていく。

 遺産相続の場に同席した整は、横溝正史の推理小説『犬神家の一族』を連想するのだが、映画を観て真っ先に連想したのは市川崑監督の角川映画『犬神家の一族』だった。同作で石坂浩二が演じた金田一耕助は、もじゃもじゃの髪型の探偵で名推理を披露するという意味で、整と重なる部分が多い。

 そのため『犬神家の一族』のように、遺産相続をきっかけに連続殺人が起こるのかと思っていたが、物語は既存のミステリーの枠組みから外れていき、意外な場所へと着地する。TVシリーズから観てきた視聴者にとっては、集大成といえるエピソードだと言って間違いないだろう。

 また、本作最大の収穫はヒロインの汐路を演じた原菜乃華の瑞々しさだ。80年代の角川映画は『犬神家の一族』のような人気小説の映画化と、薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子といった若手女優をヒロインに据えたアイドル映画を作ることで、大きな盛り上がりを生み出していった。

 汐路を演じるために髪をバッサリと切ってショートにしたこともあってか、原の佇まいは角川映画時代の薬師丸ひろ子を思わせるものがあり、彼女のアイドル映画だったとも言えるだろう。

 監督の松山博昭は、物語の重要なポイントで、汐路の表情をとらえた顔のアップを挟み込んでいる。TVと違い、映画の大きなスクリーンで観る顔のアップは、表情から読み取れる情報量が多すぎるため、扱いが難しいのだが、どのシーンの表情も見応えがあり、順番に追っていくと、彼女が整と出会ったことで変わっていく過程がよくわかる。

 見どころ盛りだくさんの映画だが、一番の注目は、原菜乃華の表情である。

参照

※1 https://plus.tver.jp/news/106891/detail/

■公開情報
映画『ミステリと言う勿れ』
全国公開中
出演:菅田将暉、松下洸平、町田啓太、原菜乃華、萩原利久、鈴木保奈美、滝藤賢一、でんでん、野間口徹、松坂慶子、松嶋菜々子、伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆、永山瑛太、角野卓造、段田安則、柴咲コウ
原作:田村由美『ミステリと言う勿れ』(小学館『月刊フラワーズ』連載中)
監督:松山博昭
脚本:相沢友子
音楽:Ken Arai
主題歌:King Gnu「硝子窓」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:東宝
製作:フジテレビジョン、小学館、トップコート、東宝、FNS27社
©田村由美/小学館 ©フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社
公式サイト:not-mystery-movie.jp
公式X(旧Twitter):@not_mystery_
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