『らんまん』は“死”よりも“生き様”を描く 万太郎が寿恵子に誓った永遠の愛に涙

『らんまん』は“死”よりも“生き様”を描く

 かつて万太郎は第93話で、竹雄(志尊淳)に寿恵子は「笹のような人」と話していた。大抵の草花は茎の先端から成長するが笹は違う。節の一つ一つがグンと伸びて、一気に背を伸ばす。笹は寒くて厳しい場所でも、しっかり根を張る。飛び抜けて、生きる力が強いのだと。仙台の森で見つけた、後の「スエコザサ」はまさにその特徴が当てはまる植物だ。それでいて光に映えて、柔らかい雰囲気を持つ。学名は「Sasa swekoana makino(ササ スエコアーナ マキノ)」。それは寿恵子への永遠の愛。“草花の精”である万太郎とはこれからもずっと一緒だ。

 「寿恵ちゃんはいつじゃち、わしを照らしてくれた」という万太郎の言葉は、第2話でタキ(松坂慶子)が万太郎に言った「万太郎が、わしの人生を照らしてくれゆう」と対になっている。そして、寿恵子の「草花にまた会いに行ってね。そしたら、私もそこにいますから」は、第5話で死にゆくヒサ(広末涼子)が万太郎に遺した「春になったら、お母ちゃん、あそこにおるきね」を彷彿とさせるセリフだ。

 筆者が『らんまん』を観ていて、最も印象的だったのは直接的に死を描いていないことだった。それはまた植物も一緒で、枯れた花はほとんど、もしかしたら一度も出てきていないかもしれない。日本には桜を例にした散り際の美しさという観念がある。ヒサとバイカオウレン、タキとヤマザクラ、寿恵子とスエコザサ。その人々の人生が咲き誇る物語、それが『らんまん』だった。

 最後に。9月22日放送の『あさイチ』「プレミアムトーク」で神木隆之介が視聴者に投げかけていた、この作品のヒロインは誰なのかという問い。出会った頃の若き姿の万太郎と寿恵子が微笑み合うシーンを見て、一抹の寂しさを覚えるのと同時に、自分にとっては日々を照らしてくれていたのはこの2人だったのだと感じた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】 
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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