『VIVANT』が描いた大きな愛 往時のテレビのあり方を彷彿とさせる視聴者参加型ドラマに

 後半でベキが自身の身柄を差し出し、乃木とノコルに後を託す場面は、単なる任務に引き裂かれる家族ではない、父子の感情の往来があった。擬似家族だったテントが、乃木という血のつながった家族の登場によって解体に至る経緯には、必然性が感じられた。一方で、前提になっているのが日本という不特定多数の集団の利益であり、テントの最終標的が日本である理由も、誤解あるいは個人レベルの悪に収斂してしまうことにやや消化不良感があった。

 ところどころベタな設定やセリフに陳腐さを感じることもあったが、それらのマイナス面も含めて物語のスケールと強度が凌駕しており、別班とテロリストを題材とする異色の作品に乗せる俳優陣の熱量が素晴らしかった。

 この3カ月、毎週放送を楽しみにしていたし、多くの人がそうだったと思う。多様な視聴形態や考察によって、多数の視聴者が本作に能動的に参加した様子は、往時のテレビのあり方を彷彿とさせた。最後に乃木と薫(二階堂ふみ)、ジャミーンが再会するシーンがあったが、大きな愛の話である『VIVANT』をもっとも身近な愛の形でしめくくったところに、本作もまた大切な誰かを思って作られた作品であると感じた。

■配信情報
日曜劇場『VIVANT』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、二宮和也、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
©︎TBS

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