『マスクガール』をイッキ見してしまう理由 ちりばめられた韓国映画・ドラマのエッセンス

『マスクガール』をイッキ見してしまう理由

 Netflixで配信中の韓国ドラマ『マスクガール』は、NetflixグローバルTOP10のテレビ部門の1位を獲得したほか、韓国のみならず、日本や台湾、アジア圏でも1位に躍り出た注目作だ。

 原作は同名のウェブトゥーンで、日本でも読むことができる。顔にコンプレックスがあるが、プロポーションには自信がある(ドラマではそのような設定は薄いが、漫画のほうではけっこう冒頭から強調して描かれている)、しかしどこにでもいそうな会社員のキム・モミが夜はBJ(Broadcasting Jockey)をしているという話で、絵の雰囲気的には脱力感のあるシニカルな日常系のギャグマンガと言った様相である。漫画の中のモミは、女性の同僚と会社の人々と愚痴ばかり言っていたりもして、日本にもよくあるOLものの4コマ漫画のような空気なのだ。

 しかし、ドラマになると、そのトーンはがらりと変わり、ダークな色みの映像からは韓国特有のノワールの雰囲気が漂う。

 監督を務めたのは、『藁にもすがる獣たち』(2020年)のキム・ヨンフン。『藁にもすがる獣たち』は、曽根圭介による日本の小説が原作であるが、この作品も、キム・ヨンフンの監督の手にかかると、韓国らしいノワールのトーンの映画に仕上がっていた。

 『マスクガール』は全7話のドラマであるが、飽きさせない工夫があり、ダークで、ときに凄惨な暴力を描くことも厭わない空気がなじめる人ならば最後まで一気に観てしまうだろう。

 1話ごとに誰の目線から見られた物語であるかが変わり、ひとつの事件、出来事が異なった方向から描かれるのも、一気に観られる所以だ。全体を通しての主人公、キム・モミを整形前、整形後、刑務所に入ってからの3場面で、3人の俳優が演じ分けているのも注目ポイントだ。

 第1話の中心人物は整形前のキム・モミ。新人のイ・ハンビョルが演じているが新人であることをまったく感じさせない。モミは幼い頃から人前で歌を歌い、喝采を浴びることに純粋な喜びを感じていた。しかし、中学校、高校に入ると、人々から喝采を浴びるのは、自分ではないということを知るのだった。

 大学を卒業し、会社でもくもくと働くモミであったが、ひとたび家に帰ってメイクをし、ウィッグをつけ、きらびやかな衣装を身に着け、最後にマスクを装着すると、動画配信サイトのスターになれるのだった。

 しかし、配信を楽しみにしているファンと直接、会ったことで運命は一変。彼女を助けに来た会社の上司であるチュ・オナム課長(アン・ジェホン)も巻き込んだ殺人事件に発展していく。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる