『どうする家康』山田真歩×広瀬アリス×松嶋菜々子、“戦国の妻”たちが解き放った家康の心
秀吉が年老いた母をも人質に差し出すと決めた時、そのことを伝えられた旭がふと憂いた表情を浮かべたのを、於愛と於大は見逃さなかった。旭と早いうちから打ち解けた於愛と於大は、旭が秀吉の“役に立つために”思いを押し殺していることに気づいたのだ。秀吉に無理やり人質として差し出される旭と老母の胸中を慮る於愛だが、頑なに上洛を拒む家康には於愛の訴えが届かない。そんな折、家康の母・於大が「人を思いやれるところがそなたの取り柄だと思うておったがの」と口にした。そして於大は「これは、わしと秀吉の駆け引きじゃ!」と言い返す家康にきっぱりと言い放つ。
「おなごは男の駆け引きの道具ではない!」
旭は秀吉によって無理やり離縁させられ、離縁した夫は行方知らずとなっている。家康と秀吉の駆け引きに巻き込まれた旭の本心は、顔を伏せ、声をあげて泣く姿にある。頭を床に擦り付けるようにして泣きじゃくる姿は、彼女の純朴さを表すと同時に、深い悲しみも表している。
旭の置かれている立場を思いやり、家康に自らの思いを言明した於大の強さと、まっすぐな目で「お方様が目指した世は……殿がなさなければならぬものなのでございますか?」「ほかの人が戦なき世を作るならそれでもよいのでは……」と考えを訴えかけた於愛の強さもまた、瀬名との誓いに苦しんでいた家康の心を解くきっかけとなった。
物語の終わり、家康は「両家の間を取り持とうと懸命に明るく振る舞ってくれたのに……老いた母君まで来させることとなり、まことに申し訳ない」と旭に詫びる。家康は上洛を決めたこととともに、「そなたのおかげで……我が家中が少しだけ明るくなった」と感謝の言葉を述べた。その言葉を受け、旭が涙ながらにふと見せた笑顔は、飾り気のない、素直で魅力的な笑顔だった。深く深く頭を下げ、泣きじゃくる旭に、家康は優しく寄り添っていた。人質として徳川方にやってきた旭だが、家康が「大事な妻」と伝えた通り、彼女が徳川家で穏やかな日々を過ごすことを願ってやまない。
■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK