『インフォーマ』桐谷健太×佐野玲於×森田剛の奇跡的な共演 2周目は全く違う味わいに

 とにかく騙されたと思って観てほしいドラマがある。きっと1話を観始めたら止まらなくなるはずだから。そして、もしイッキ見してしまうほどハマったときには、再び騙されたと思って2周目を観てほしい。きっと1度目とは全く違う視点を味わえるはずだから。

 そのドラマとは、Netflixで全世界配信され、2023年1月期にはカンテレローカルドラマ枠「EDGE」でも放送された『インフォーマ』。8月25日には、ついにBlu-ray&DVD BOXとなってファンのもとに帰ってくる。

 特典映像には桐谷健太、佐野玲於、森田剛ら主要キャストをはじめとしたインタビュー集に、「あのシーンはどうやって撮影したのか?」という疑問に応えてくれるメイキング映像など、本編を何周も味わった先に、より楽しむことができる内容になっている。

 インフォーマとは、元ヤクザの情報屋のこと。物語は「普通に生きていたら見られない世界を見たい」と願うポンコツ週刊誌記者・三島が、裏社会をさらに裏から操るインフォーマを取材するために行動を共にするところから始まる。だが、その出会いは地獄の始まりだった……。

 原作は、自らがアウトローだった経歴を活かして執筆活動を行う沖田臥竜の同名小説。本作では監修も務めていることでも話題に。そして、メガホンを取ったのは映画『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した藤井道人。ホンモノを知る沖田×リアルを骨太作品に昇華させられる藤井の最強タッグが、この至極のクライムサスペンスを生み出した。

 1話あたり約30分。そう聞くとライトな印象を持つかもしれないが、これがむしろ逆だということが観始めてからわかるだろう。もしかしたら30分ごとに一息つかないと、視聴者が酸欠になってしまうからではないかという濃厚さなのだ。

 1話1話観終えるたびに、静かに「フーッ」と息を吐かずにはいられないスピード感はまるでジェットコースターのよう。緊迫したシーンの連続に、つい呼吸を忘れて見入ってしまうのだ。なかでも、筆者が脱帽したのは後半がまるでワンカットで撮影されたように構成された第8話。まさに「普通に生きていたら見られない世界」に飛び込んでしまったかのような臨場感あふれる光景が広がる。

 なぜ、こんなことに巻き込まれてしまったのか、一体何が起こっているのか……。おそらく1回目の鑑賞で抱く感想は、“ポンコツ”こと三島と同じもの。権力者たちが街中で火だるまにされる凄惨な殺人事件が次々と起こっていくなかで、どうやら犯人グループとインフォーマの間に5年前から続く因縁があるようだと見えてくる。しかし、インフォーマは「黙って運転すればいい」と詳しくは教えてくれない。

 何もわからないまま、命がけの取材を続けていく三島。ときには拷問も厭わないインフォーマの日常に、「こんなの観ていられない」と途中で逃げ出したくなるのは視聴者も同じだ。それでも5年前に何があったのか、これからどうなってしまうのか。その真相を見届けずにはいられない。これが桐谷の言う「劇薬」のような刺激ということだろう。

 最終話に向けて徐々に紐解かれていく謎。それらが明らかになったあと再び1話から見返したときには、インフォーマの言葉にならない思いが透けて見えてくる。さらには、事件を起こす謎の男の沈黙にも意味を見出したくなる。鑑賞する度に、新たな感情に気づくことができる。そうして深く深く知る楽しみがあるのも、この作品の面白さだ。

 今回、インフォーマの木原を演じたのは、本作が連続ドラマ単独初主演の桐谷健太。これまで数々の名作に出演してきたイメージ通り、木原の強くてアツい兄貴分なキャラクターはまさに桐谷のハマり役といったところ。

 インタビューでも「自分にしかできない役だな」と桐谷自身もプライドを持って演じている様子は、作中で「(裏社会を牛耳るインフォーマは)どう見ても俺やろ、風格的にも、オーラ的にも」と三島に言ってのける木原と重なって見えるようだった。

 そんなインフォーマ・木原に「ポンコツ」と呼ばれ、徐々に裏社会へと引きずりこまれていく三島の役にはGENERATIONSの佐野玲於。この佐野の三島役もまた適役だった。本来の彼はキレキレのダンスを披露する肉体派だが、本作ではベテランの俳優陣に囲まれて常に緊張していたことから“オドオドするポンコツの三島”を自然と演じることができていたようだ。

 インフォーマが敵の足に凶器を刺すところを間近に見て「それ痛い!」なんて叫んでしまうシーンは思わず共感してしまうし、敵のアジトに突撃する際にはカメラを回すこともままならないほどに心身が疲弊していく様もどこかかわいらしく見える。そんな佐野の親しみやすさがハードな物語と視聴者とをつなぐ役目を果たしていた。

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