『転職の魔王様』が明かした求職者と採用企業の本音 宮野真守が転職繰り返す“王子”に
「転職は道の途中。人生の第一章と第二章のつなぎみたいなものです。決して生きがいにするものではありません」
『転職の魔王様』(カンテレ・フジテレビ系)第6話では、転職に対する考え方の違いが顕在化した。第6話でスポットライトを浴びたのは、人呼んで「転職王子」こと八王子道正(宮野真守)だった。不動産会社勤務の八王子は現在39歳で、これまでに6回の転職を繰り返し、そのうち2回はシェパードキャリアが担当した。敏腕営業マンで実績も十分。転職を希望する理由を聞かれた八王子は、「飽きちゃったんです」とにわかには信じがたい言葉を口にした。
腰を据えてじっくりと仕事に取り組むことを美徳とする考えは過去のものになりつつあるが、一方で、それなりに年齢を重ねてキャリアを積んでも、一つの場所に落ち着くことができない人もいる。八王子は後者だった。不動産営業のスキルを活かして、職場を渡り歩く。転職することが自己目的化した八王子は、転職というゲームの世界でワープを繰り返す主人公のように見えた。
企業が将来設計や地位を保障してくれなくなってからというもの、会社が社員の人生を縛ることの必然性が薄れて、転職活動をすることは心理的に容易になった。一方の企業の側も有能な人材を引き入れるチャンスだが、実際はどうかというと、ジョブホッパーに対する視線は厳しい。シェパードキャリア社長で千晴(小芝風花)の叔母の洋子(石田ゆり子)は、「自分の会社をステップアップの途中階にされたいと思う経営者はいない」と雇う側の本音を明かした。
自己都合をたやすく受け入れてくれるほど社会は甘くない。ましてや、それが転職3回以上のアラフォーならなおさらだ。案の定、自信満々で臨んだ面接で、八王子は経験では数段劣るがやる気と将来性でまさる20代に先を越されてしまい、実績を評価してくれる今の会社からは昇進を条件に慰留された。選択肢は先細りしているのに、当の本人がそのことから目をそらしている。千晴と来栖(成田凌)が考えた方法は、ストレートに現実を突き付けることだった。
現場でばりばり働きたい。実力を発揮したいと自分が思っていても、周囲が自分に臨む役割は違っていて、責任を負わずに逃げているように見られてしまう。年齢相応のキャリアにふさわしい職責というものがあって、会社の一員になるということは、いつまでも夢を見ていられないことを意味していた。安定志向の比較的若い世代なら、八王子の考えにうなずける部分があったかもしれない。八王子が出世したくない理由は別にあって、若手時代の経験に起因していたのだが、現実を直視した八王子には、とどまるのでも、辞めるのでもない第3の道が眼前に開けた。