『らんまん』植物採集ロケに密着! 細部までこだわり抜いた制作陣の本気を見た

 朝ドラ『らんまん』(NHK総合)にて繰り広げられている植物の世界。ただ歩いていたり、話している途中にも、気がつくとその辺に生えている植物に気を取られ、目を輝かせて採集する万太郎(神木隆之介)。2〜3分の採集シーンには、数カ月前から、植物の専門家スタッフが監修に協力し、関わっている。

 6月某日、東京の小石川植物園にて植物採集ロケが行われた。万太郎のモデルとなっている植物学者・牧野富太郎が在籍した東京大学植物学教室は小石川植物園にあり、同園でロケが行われたのは初めてのこと。この日は主演の神木隆之介、山元虎鉄役の寺田心、藤丸役の前原瑞樹が現場に入っていた。

 この日の最初に撮影されていたのが、高知で植物採集に訪れた万太郎と寺田演じる山元虎鉄が出会うワンシーン。植物監修チームは、1880年代の高知の山奥という設定を、現代の小石川植物園で再現する。

 植物採集のシーンに入る前の準備として、植物担当スタッフの堀川純氏は「台本が出来上がったら、そのシーンに必要な植物を調べます。レプリカが必要なものは2〜3カ月前から京都の西尾製作所に依頼して制作に入ることが多いです。毎週の副題になっている花のほとんどはレプリカを制作して使っています。採集するシーンで使うものなので、現場で本物が埋まっているように見せるために、枝や根っこ部分までレプリカを制作している西尾製作所に作ってもらい、周りの設えを本物とレプリカをよりなじませるために美術さんにも枝や土の部分にまでこだわって準備してもらって作ってもらいます。カメラやお芝居の位置を移動する度に見える角度が変わるので、埋まっている場所を変えようとなった時にいくつかパターンを用意することも多いです」と説明する。

イヌビワの標本

 第30話で万太郎が白梅堂の近くで見つめていたタンポポもレプリカで、本番で使ったいくつかのレプリカはイベントで展示されている。

 一方で、レプリカではない本物を使用するシーンもあり、寿恵子(浜辺美波)が好きな花で答えた第7週「ボタン」の回のボタンなどは生花を用意したそう。また、レプリカを制作する時には、見本として本物を用意する必要がある。植物監修チームの一人である植物学指導の栃原行人氏は「身近にない植物も多いので、趣味で標本をたくさん集めているコレクターさんに協力してもらったりすることも多いです」と、植物に関するあらゆる情報網を駆使していることを明かした。

第19週で登場するヤッコソウ

 植物監修チームが携わるのは採集シーンだけではない。万太郎が歩くのは森や山、草木が必ず生えているといっていいほどの道ばかり。そのような背景に映る植物の考証を行うのも役割だ。園内の奥地で敢行された今回のロケで栃原氏は「第19週は高知で照葉樹林が舞台なので、6月に咲く花が11月には咲いていない場合があります。今日は南国感のある植物が多く茂っていたので、カメラに入る部分では11月の高知に生えていない草はあらかじめ映さないように配慮していました」と話してくれた。現場では、カメラの位置が変わるごとに、本物に近いその時代・土地の環境を整えていた。

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