『ソウルに帰る』映画初出演パク・ジミンの圧倒的存在感 ルーツに揺らぐ20代のリアルさ

 そして作中では「衣食住」にまつわる表現が数多く出てくる。フレディが各所でもてなされたりするため、それ自体には恣意性を感じないショットだ。しかしこのようにして土地との交わりを持つことが、ルーツの追求、そしてその先にある「自分と違うものに対する理解」に繋がってくる。

 飯を食って酒を飲み、たくさん話をして、音楽を聴き言葉を知り……そうしたことのすべてを経て、文字通り人は“土着”していくのだろう。未知の土地に飛び込みだんだんと溶け込んでいく、その過程はまるでその土地とセックスをしているとも言える。フレディが男と寝るシーンもあり、それはそうした類のものと交わっている表現なのだと感じた。

 フレディが韓国での生活を通して触れるさまざまな愛を受けて、どのように心境が変化していくのか。そしてどのような決断を重ねていくのか。当事者性が高い物語だからこそ見えてくる愛の本質もあり、すべての自分が信じるものを見失った人たちや、特にフレディと同じくアイデンティティが揺らぐことの多い20代の人にこそ実感を伴って届く映画なのかもしれない。

映画『ソウルに帰る』予告編

■公開情報
『ソウルに帰る』
Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて公開中
監督・脚本:ダヴィ・シュー
撮影:トーマス・ファヴェル
編集:ドゥニア・シチョフ
出演:パク・ジミン、オ・グァンロク、キム・ソニョン、グカ・ハン、ヨアン・ジマー、ルイ=ド・ドゥ・ランクザンほか
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
配給:イーニッド・フィルム
2022年/フランス、ドイツ、ベルギー、カンボジア、カタール/119分/1:1.85/カラー/字幕翻訳:橋本裕充/原題:All The People Iʼll Never Be
©AURORA FILMS/VANDERTASTIC/FRAKAS PRODUCRIONS/2022
公式サイト:https://enidfilms.jp/returntoseoul
公式Twitter:https://twitter.com/returntoseouljp

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